産業用ロボットおよび工場自動化システム大手のファナック(6954)は国策銘柄として注目を集めています。政府が推進する「17の戦略分野」ではAIや造船を重点領域に据えており、ファナックには恩恵が期待されます。

ファナックと国策の関連を整理してみましょう。後半では業績と株価動向も解説します。

※記事中で記載の株価は全て終値となっています。
※決算情報・業績等は執筆時点での情報にもとづいています。
※株式分割の影響は全て遡及修正して株価を調整しています。

1. 【ファナック(6954)】エヌビディアと「フィジカルAI」でタッグ組む

世界的にAIの開発や活用が加速するなか、政府もAI分野を強化する方針です。ファナックは産業用ロボットで世界トップクラスのシェアがあり、「フィジカルAI」でも有力と目されています。

フィジカルAIとは、AIがロボットや機械の動作を制御する技術です。従来型のロボットはあらかじめ設定が必要で、作業は定型的な動作に限定される傾向です。一方、フィジカルAIはAIがロボット操作を担い、リアルタイムで柔軟な動作が可能とされます。

1.1 エヌビディアと協業を開始

現実世界でもAIの活躍が予想されるところ、ファナックはフィジカルAIへの取り組みを強めています。2025年12月にAI半導体の米エヌビディアと協業を開始し、同社の開発プラットフォームに正式対応しました。

さらに、ファナックはロボット制御ソフトのオープンソース化にも踏み切ります。自社の技術を公開することで、外部の技術者にファナック製ロボット向けのAI開発を促す戦略です。

1.2 フィジカルAI発表後に受注1000台超

ファナックは、フィジカルAIを発表した展示会後に1000台を超える受注を獲得し、2026年3月期第3四半期に計上しました。「今後数千台規模の受注をはじめ多くの商談」も発生していると説明しています。ファナックとエヌビディアは、業界トップランナー同士でタッグを組み、フィジカルAIの進化を加速させます。

1.3 米国で新工場を設立しロボット生産能力を拡張

需要の高まりを受け、ファナックは生産能力も拡張する方針です。同社は2026年3月、米国で新施設を建設すると発表しました。投資額は143億円で、フィジカルAIなどの自動化ニーズに対応するとしています。新施設の完成は2027年後半の予定です。

2. 【ファナック(6954)】造船業を救う「11kgの救世主」新型の小型ロボットをリリース

政府が重点を置く領域の1つが造船です。国内造船業は、国際的な価格競争の激化により厳しい局面が続いてきました。こうした中、政府は国内産業の再生に向けた支援を強化しています。政府は投資を強め、国内造船業の再生を促す方針を打ち出しています。

2.1 持ち運び可能な小型ロボットをリリース

国内造船の課題の1つが人出不足ですが、ファナックの新製品はその解消への貢献が期待されています。同社は2025年12月に「CRX-3iA」の販売を開始しました。11キログラムと軽量で持ち運びや設置が容易なほか、自律制御も搭載しているため入力などの操作も不要です。

2.2 造船における溶接用途で強い需要が期待

ファナックは作業効率が向上するとして、造船の溶接現場などでの稼働を想定します。

ファナックによると、CRX-3iAは造船メーカーからの要望に応えて開発しました。政府の方針も重なり、迅速に提供できたと評価しています。展示会では国内だけでなく海外の造船メーカーからも導入の意向が示されたとしており、ファナックは需要について「非常に高い引き合い」と自信をにじませています。

3. 【ファナック(6954)】2026年3月期「増収増益」営業益15.6%増!

続いて業績を確認しましょう。ファナックは2020年3月期にかけて苦戦しました。アジア向けが中心であり、2018年に激化した米中貿易摩擦の影響を受けた格好です。中国で設備投資が見送る動きが強まり、ファナックには逆風でした。現在は、そこからの回復が続いている状況です。

ファナックの業績(2016年3月期~2026年3月期)2/3

ファナックの業績(2016年3月期~2026年3月期)

出所:ファナック株式会社「決算短信」より著者作成

3.1 ファナック(6954)業績のポイント

  •  2018年米中貿易摩擦からの回復続く
  •  2026年3月期3Q累計は売上高6.5%増、営業益15.6%増
     →インドや中国で好調、米州も関税影響かわし堅調
  •  2026年3月期3Q決算では通期の予想営業利益を下方修正
  •  →一時的要因で影響軽微

直近の2026年3月期は第3四半期まで決算が公開されています。売上高は前年同期比6.5%、営業利益は同15.6%増と好調でした。制御システムやロボットはインドや中国で売り上げが伸び、業績をけん引しました。関税影響が懸念された米州も、前年並みの売り上げを確保しました。

第3四半期決算では通期の予想が修正されました。従来予想比で売上高は219億円増額の8407億円、営業利益は30億円減額の1729億円へ見直されます。前期比では売上高は5.5%増、営業利益は8.8%増となる計算です。

なお、営業利益の下方修正は海外在庫における円安に伴う未実現利益が主因です。未実現利益はグループ外へ販売された際に取り込むもので、利益を繰り延べている状態であり、長期的には収益認識のタイミングの問題であり、過度な懸念は不要との見方もあります。ただし、地政学リスクに伴うコスト変動など、外部環境の注視は不可欠です。ファナックは即納体制のため在庫が厚めという構造はありますが、未実現利益の影響は原則として一時的なものといえるでしょう。

4. 【ファナック(6954)】フィジカルAI期待で8年ぶり高値「中東リスクは警戒」

最後に株価の動向を押さえましょう。

ファナックの株価(日足、1年)3/3

ファナックの株価(日足、1年)

出所:著者作成

4.1 エヌビディアと協業発表後に上昇

ファナックの株価は2025年12月初旬に急騰しました。エヌビディアとの協業が材料視されたとみられ、発表の翌営業日は前日比9.4%高となる一時5512円まで買われます。

その後も続伸し、2026年1月にはそれまでの上場来高値(2018年1月:6690円)を8年ぶりに更新しました。同年2月には7175円の高値をつけています。

4.2 イラン紛争が上値を抑える展開

その後、イラン紛争の懸念から株式市場は全体的に調整局面となります。ファナックも連れ安となり、2026年3月は25.4%下落しました。中東リスクの台頭により、当面は不安定な値動きが続きそうです。

今回はファナック(6954)について国策との関わりや業績、株価について解説しました。ファナックはエヌビディアとの協業による「フィジカルAI」の展開や、政府が主導する造船分野でのロボット活用など、国策と合致する成長戦略を加速させています。

直近の業績は中国・インド向けを中心に底堅く推移していますが、足元では円安に伴う会計上の利益調整や中東情勢による株価の乱高下といった不安定要素も抱えています。先端技術への期待感の一方で、地政学リスクや設備投資需要の持続性を冷静に見極める局面にあると言えるでしょう。

免責事項

  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の株式の売買を推奨するものではありません。
    投資判断は、最新の決算資料や市場動向をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件は変更される場合があります。詳細は必ず公式サイトでご確認ください。

参考資料