年度が変わると、社会保険料や住民税の金額が決定され、納付が始まります。どちらも給与や年金などの収入から差し引かれるため、私たちは手元に残った金額で日々の支出を賄わなければなりません。
とくに住民税は課税状況によって、家計に大きな影響を及ぼします。非課税であれば収入をそのまま受け取れますが、課税対象になれば手取りが減り、場合によっては非課税世帯よりも手取りが少なくなる可能性もあります。
住民税の課税・非課税はどのようにして決まるのでしょうか。この記事では、住民税非課税の仕組みや基準について解説します。
1. 住民税非課税世帯とは?
住民税非課税世帯とは、世帯を構成する全員に住民税が課税されない世帯です。住民税は、以下の2つで構成されます。
- 所得割:所得に応じて負担額が決まる
- 均等割:課税対象者が一律に負担する
一般的に住民税非課税世帯として扱われるのは、上記のどちらも課税されない世帯です。一部の事業では、均等割のみ課税される世帯も住民税非課税世帯として扱われる場合があります。
住民税非課税世帯に該当すると、税負担がなくなるだけでなく、さまざまな優遇措置を受けられます。たとえば、国民健康保険料は所得金額に応じて2割・5割・7割のいずれかの軽減を受けられます。
- 7割軽減:43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円以下
- 5割軽減:43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+30.5万円×被保険者数以下
- 2割軽減:43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円+56万円×被保険者数以下
このほかにも、以下のような優遇措置を受けられます。
- 高額療養費制度の自己負担限度額の引き下げ
- 介護保険料の軽減
- 非課税世帯を対象とした国の給付金の受給
住民税非課税であればさまざまな制度の恩恵を受けられますが、基準を少しでも超えて課税世帯になると、上記の措置が受けられなくなる可能性が高いです。将来的に上記の措置を受けたいと考えている人は、住民税が非課税となる基準の収入・所得を把握しておく必要があります。
次章では、住民税非課税になる基準について解説します。
2. 住民税非課税になる「境界線」
住民税が非課税になるボーダーラインは、収入の種類によって変わります。給与収入と年金収入に分けて、それぞれの基準を見ていきましょう。
2.1 給与収入の場合
給与収入の場合、住民税が非課税になる基準は以下のとおりです。
- 単身世帯:110万円
- 夫婦世帯:166万円
2025年の所得に対して計算される2026年度からの個人住民税は、給与所得控除の最低控除額が55万円から65万円に引き上げられました。そのため、給与収入を得ている人の住民税が非課税になるラインも、100万円から110万円に上昇しています。夫婦世帯は配偶者が扶養に入っている場合、給与収入166万円までなら住民税はかかりません。
2.2 年金収入の場合
65歳以上で年金収入を得ている場合、住民税が非課税になる基準は以下のとおりです。
- 単身世帯:155万円
- 夫婦世帯:211万円
年金は給与に比べて所得控除額が大きく、給与収入がある人に比べて基準が高く設定されています。年金に適用される「公的年金等控除」は、65歳以上の場合で最低でも110万円が控除されます。そのため、より多くの人が住民税非課税になる可能性があるのです。
ただし、ここまで紹介してきた基準額は、あくまで東京23区など都市部の目安です。実際は、自治体によって基準が異なります。次章で解説します。
3. 【注意】住民税非課税世帯の基準は自治体で変わる
住民税が非課税になる基準は、自治体によって変わります。自治体ごとに物価・生活水準が異なるためです。
非課税になる基準は「級地」の仕組みをもとに決定します。級地は生活保護費を決定する際に、その自治体の生活・物価水準を保護費に反映させる制度です。住民税が非課税になる金額も、これにならって自治体ごとの事情が考慮された金額が設定されています。
例として、以下の3自治体で住民税が非課税になる基準額を見てみましょう。
1級地(東京23区)
- 単身世帯:45万円以下
- 夫婦世帯:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
2級地(茨城県水戸市)
- 単身世帯:32万円+10万円以下
- 夫婦世帯:32万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+18万9000円+10万円
3級地(北海道富良野市)
- 単身世帯:28万円+10万円
- 夫婦世帯:28万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+17万円+10万円
都市部に該当する1級地ほど基準額が高く、2級地・3級地になるにつれて下がっていく仕組みです。そのため、居住地によっては、前述の基準額以下の収入でも、住民税が課税される場合があります。自分が住む自治体の住民税が非課税になる条件を、あらためて確かめておきましょう。
次章では、非課税・課税による手取りの逆転について解説します。
4. 境界線を超えると「手取りが逆転」
住民税が非課税になる境界線を超えて課税世帯になると、住民税の徴収が始まります。住民税も、社会保険料などと同様に給与や年金から差し引かれるのが一般的です。
ここで注意したいのが「ギリギリ課税世帯になると、手取りが逆転する」ことです。わずかな収入増でも住民税負担が発生し、社会保険料の負担額も変わるため、かえって手取りが減ってしまいます。
例として、単身世帯で年金収入が155万円の場合と、156万円の場合の手取り収入額を見てみましょう。
- 所得税:0円
- 住民税:0円
- 国民健康保険料:3万4130円
- 介護保険料:5万1480円
- 合計:8万5610円
- 手取り収入(年間):155万円-8万5610円=146万4390円
- 所得税:0円
- 住民税:8000円
- 国民健康保険料:3万5170円
- 介護保険料:8万7120円
- 合計:13万290円
- 手取り収入(年間):156万円-13万290円=142万9710円
収入の差はわずか1万円でも、差し引かれる金額には4万円以上の差があります。とくに住民税の課税状況で金額が大きく変わる介護保険料の存在が、手取りに大きな影響を与えているといえます。
手取り収入で比較すると、年間で約3万5000円ほどの差が生じます。
こうした逆転現象は、収入額を調整できない限り、自分自身で回避できる可能性は高くありません。どちらに該当してもよいよう、日頃から資産や貯蓄を増やすことを意識し、支出に備えていくことが重要です。
5. まとめ
住民税の課税・非課税は、家計に大きな影響を及ぼします。1円でも基準を越えれば課税対象として住民税が課され、社会保険料も増加します。
給与や年金といった収入は、自分自身の手で調整するのが難しいものです。住民税の課税・非課税の仕組みだけでもおさえておき、課税対象になっても生活が破綻しない水準の資産・貯蓄を備えることを心がけましょう。





