6. 【医療費】自己負担1割・2割・3割の決まり方とは?後期高齢者医療制度を解説

75歳になると、すべての人が後期高齢者医療制度に加入します。この制度では、前年の所得に応じて、医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合が決定されます。

自己負担割合は原則1割ですが、増え続ける医療費に対応するため、2022年10月1日からは一定以上の所得がある方を対象に2割負担が導入されました。

6.1 所得に応じた負担割合の判定基準

  • 1割負担:現役並み所得者や2割負担の対象者に該当しない方
  • 2割負担:一定以上の所得がある方で、以下の条件を両方満たす場合
    1. 同じ世帯の被保険者の中に、課税所得が28万円以上の方がいる
    2. 同じ世帯の被保険者の「年金収入」と「その他の合計所得金額」の合計が、1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は合計320万円以上
  • 3割負担:現役並み所得者の方
    • 同じ世帯の被保険者の中に、課税所得が145万円以上の方がいる場合(注)ただし、一定の基準を満たせば1割または2割負担になる場合があります

なお、自己負担の急増を緩和するための特例措置は2025年9月末で終了したため、今後は2割負担の対象となる世帯が増加する可能性があります。

医療費の負担が増えれば、その分だけ貯蓄を取り崩すペースも速まりかねません。家計を安定して維持するためにも、自分がどの負担区分に該当するのかを定期的に確認することが重要です。

7. 高額療養費制度で医療費負担は軽減できる?上限額の仕組み

後期高齢期には医療費の増加が心配になりますが、その負担を和らげるために「高額療養費制度」が設けられています。

この制度は、入院や手術などで医療費が高額になった際に、自己負担額が一定の上限を超えた分について払い戻しを受けられる仕組みです。急な出費に対する備えとして重要な役割を果たしており、制度内容を理解しておくことで、医療費への不安を具体的に捉え直すことができます。

7.1 自己負担額の上限が定められている

高額療養費制度では、1カ月にかかった医療費について、所得区分ごとに自己負担の限度額が設定されています。

以下は、70歳以上の方を対象とした高額療養費制度における自己負担額の一覧です。

高額療養費制度(70歳以上)7/7

高額療養費制度(70歳以上)

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

例えば、一般的な所得水準(住民税課税世帯)の後期高齢者の場合、自己負担額は数万円程度に抑えられることが多く、医療費の総額が数十万円にのぼったとしても、実際の支払いは上限額までとなります。

この制度により、予期せぬ高額な医療費が家計に与えるダメージは、ある程度抑制される仕組みになっています。

7.2 所得区分で変わる自己負担限度額

自己負担の上限額は一律ではなく、世帯の所得状況に応じて細かく設定されています。

  • 低所得世帯(非課税世帯):より低い上限額が適用される
  • 一般所得世帯:標準的な上限額が適用される
  • 現役並み所得世帯:上限額は比較的高めに設定される

このように、支払い能力に応じて負担が調整されるため、自身がどの区分に該当するのかを把握しておくことが大切です。

7.3 入院・通院ともに適用対象

高額療養費制度は、入院や手術といった大きな治療だけが対象ではありません。外来での診療や、継続的な通院にも適用されます。

後期高齢期には、慢性疾患などで長期にわたる通院や服薬が必要となることも少なくありません。そうした場合でも、月々の医療費が一定額を超えれば高額療養費制度の対象となり、日常的な医療費負担の軽減につながります。

7.4 対象外となる費用にも注意が必要

一方で、高額療養費制度がすべての医療関連支出をカバーするわけではない点には注意が必要です。

この制度の対象は、あくまで公的医療保険が適用される「保険診療」の範囲内に限られます。以下の費用は原則として対象外です。

  • 入院時の食事代
  • 差額ベッド代(個室料など)
  • 先進医療にかかる費用の一部

そのため、実際には制度でカバーされない支出も考慮して、医療費全体を見積もっておく必要があります。

7.5 医療費を「備えが可能な支出」と考える

高齢期の医療費は不安に感じやすいものですが、高額療養費制度によって自己負担には上限が設けられているため、全く予測できない支出ではありません。

重要なのは、「いくらかかるか分からない」と漠然と不安に思うのではなく、公的制度を正しく理解し、実際の負担額がどの程度になるかを具体的に把握することです。

そうすることで、老後資金の計画もより現実的に立てられ、将来の家計設計に役立てることができるでしょう。