5. 75歳を境に広がる「家計格差」その要因とは
75歳を過ぎると、同じ高齢者でも生活スタイルや家計の状況に大きな差が生まれ始めます。年齢という一つの括りだけでは実態を把握することが難しくなり、健康状態や家族構成、資産状況などが生活の安定度を大きく左右するようになります。
例えば、同じ75歳以上の夫婦であっても、以下のような状況では家計のあり方が全く異なります。
- 夫婦ともに健康で自立した生活を送る世帯
- 夫婦のどちらかが要介護認定を受けている世帯
- 配偶者と死別し、実質的に一人暮らしに近い世帯
5.1 健康状態が家計の分かれ道に
75歳以降の生活における大きな分岐点の一つが、医療や介護にどれだけの費用がかかるかという点です。健康を維持できている間は家計も安定しやすいですが、通院が増えたり介護サービスを利用し始めたりすると、支出は一気に増加しがちです。
特に介護が必要になると、以下のような費用が上乗せされます。
- 医療費や介護サービスの自己負担額
- 介護用品の購入費や住宅の改修費
- 家事や外出をサポートする外部サービスの利用料
これらは家計調査のデータには表れにくい支出であり、同じ年金額を受け取っていても生活のゆとりに差が生まれる一因です。
5.2 家族構成の変化による固定費増加のリスク
もう一つ見過ごせないのが、家族構成の変化です。夫婦二人で生活している場合と、どちらかが亡くなり一人暮らしに近くなった場合では、生活環境が大きく変わります。
単身に近い生活になると、次のような問題が生じやすくなります。
- 住居費や光熱費が思ったほど減らない
- 家事や通院の負担が一人に集中する
- 外部のサービスに頼る機会が増える
世帯の人数が減っても生活費が比例して減るわけではなく、むしろ支出の構造が変化することで、かえって家計の負担が重くなることもあります。
5.3 「平均」では見えなくなる個々の実情
このように、75歳以降の家計は、単に年金額や貯蓄額の大小だけで決まるわけではありません。
生活環境や健康状態といった個人的な要因に大きく影響されます。
そのため、「平均的な後期高齢者夫婦」というモデルケースだけでは、個々のリアルな暮らしを捉えることは難しくなります。
大切なのは、平均値と比較することよりも、自分自身の健康や家族の状況を踏まえ、将来どのような支出が発生しそうかを具体的に予測しておくことです。
こうした個人差が広がる中で、家計にさらに大きな影響を与えるのが、75歳から加入する後期高齢者医療制度と、それに伴う医療費の自己負担割合です。この制度を理解しているかどうかが、老後の家計管理を左右すると言っても過言ではありません。
次に、後期高齢者医療制度の仕組みについて詳しく見ていきましょう。