少子高齢化が加速するなか、相続人不在により国庫へ引き継がれる財産が急増しています。財務省の資料でも、身寄りのない不動産の帰属件数は増加傾向にあり、今後もさらなる累増が予想されています。

<不動産>相続人不在による国庫帰属の推移(国庫帰属件数など)1/5

<不動産>相続人不在による国庫帰属の推移(国庫帰属件数など)

出所:財務省理財局「相続土地国庫帰属制度等に係る現状と課題」

筆者はFPとして終活や相続などのご相談を受けてきましたが「相続人がいないと自分の財産はどうなる?」と疑問に思う方は少なくありません。何の準備もなければ、大切な財産は意思に反して国庫へ帰属し、管理の難しい資産が社会の負担となる恐れもあります。今回は「おひとりさまの相続」について自分の財産の行方などをフローチャート式でわかりやすく解説します。

1. 【ステップ1】はじめにすることは「戸籍の確認」相続人は本当に誰もいない?

相続の手続きは、まず亡くなった方(被相続人)に法定相続人が存在するかどうかを確認するところから始まります。
ここでの判断が、その後の流れを大きく左右します。

1.1 法定相続人の基本的な順序

民法で定められている相続人の優先順位は、次のとおりです。

  • 配偶者:常に相続人となる
  • 第1順位:子ども(すでに亡くなっている場合は孫などの代襲相続)
  • 第2順位:父母(亡くなっている場合は祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)

1.2 「身寄りがない」と思い込まないことが重要

本人が「親族はいない」と感じていても、戸籍を遡って確認すると、疎遠になっていた兄弟姉妹や、その子どもである甥・姪が相続人として見つかるケースは珍しくありません。

なお、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合でも、甥・姪までは相続権が引き継がれますが、甥・姪の子どもには相続権は及びません。ここが、「法定相続人が存在しない」と判断される一つの分かれ目になります。

ココがポイント
  • 相続人がいる→通常の相続手続きへ
  • 相続人がいない(または全員が放棄)→【ステップ2】へ

2. 【ステップ2】相続人が不在の場合「相続財産清算人」による手続きへ進む

相続財産清算人選任申立書3/5

相続財産清算人選任申立書

出所:最高裁判所「記入例(相続財産清算人選任申立書)」

調査の結果、相続人が見つからない、あるいは全員が相続放棄をした場合、遺産は法律上「相続財産法人」として一括管理されることになります。

この段階で、利害関係者の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。相続財産清算人には、弁護士などの専門家が就くのが一般的です。

2.1 相続財産清算人が行う主な役割

  • 債務の整理:借入金や未納の税金などがあれば、遺産から支払う
  • 相続人の再確認:公告を行い、相続人がいないか最終的に調査する

申立てには、戸籍謄本一式や財産内容を示す資料が必要となり、家庭裁判所の関与のもと、厳格な手続きを経て進められます。

ココがポイント
  • それでも相続人が現れない→【ステップ3】へ

3. 【ステップ3】内縁の配偶者などは「特別縁故者」として認められる可能性も

特別縁故者に対する相続財産の分与4/5

特別縁故者に対する相続財産の分与

出所:最高裁判所「記入例(特別縁故者に対する相続財産の分与)」

相続人がいない場合でも、ただちに財産が国に帰属するわけではありません。民法には、故人と生前に特別な関係があった人を救済するための「特別縁故者」制度が設けられています。

3.1 特別縁故者と認められる可能性がある人の例

  • 法律上の婚姻関係はないが、生活を共にしていた内縁の配偶者
  • 長期間同居し、生活面を支えていた人
  • 療養や介護を継続的に行っていた人

これらに該当する人が家庭裁判所へ申立てを行い、認められた場合には、遺産の一部または全部が分与されることがあります。

ただし、申立てには費用がかかり、審理にも時間を要します。確実に財産を残したい相手がいる場合は、この制度に頼るよりも、事前の遺言書作成の方が負担は小さいと言えるでしょう。

ココがポイント
  • 「特別縁故者」もいない→【最終段階】へ

4. 【最終段階】築きあげた財産、行き場がないと「国のもの」に!その前に《遺言書》も要検討

法定相続人もおらず、特別縁故者への分与も行われなかった場合、清算後に残った財産は国庫に帰属します。なお、預貯金は国庫へ入りますが、もし不動産を誰かと共有していた場合は、その持分が他の共有者に帰属することもあります。

「お世話になった人に残したい」「特定の団体へ寄付したい」そうした思いを確実に形にするためには、遺言書を作成して意思を明示しておくことが最も確実な方法です。

4.1 おひとりさまの遺言執行と形式について

おひとりさまが亡くなった後の遺言執行は、あらかじめ遺言書で「遺言執行者」(弁護士や信託銀行、信頼できる知人など)を指定しておくことで、財産の寄付や清算などの手続きをスムーズに任せることができます。遺言書の形式は、法的な要件を満たしていれば自筆証書遺言でも有効であり、特に「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、法務局で原本が守られるため紛失や改ざんの恐れがなく安心です。

ただし、内容の複雑さや確実性を期すなら公正証書という選択肢もありますが、手軽に意思を遺したい場合は自筆証書遺言も有力な手段となります。

5. おひとりさまの相続、「人生のしめくくり」納得のいくものにするために

今回は「おひとりさまの相続」について自分の財産の行方などをフローチャート式で解説しました。

何の準備もなければ一生懸命に築いた財産は、複雑な手続きを経て最終的に国庫へ帰属してしまうこともあります。「身寄りがない」と諦める前に、まずは戸籍をさかのぼって真実を知り、大切な人や団体へ想いを繋ぐ「遺言書」という選択肢を検討してみるのもよいでしょう。

おひとりさまの遺言は、法務局の保管制度を活用して安全に守りつつ、信頼できる「遺言執行者」を指定しておくことで、あなたの死後も確実に実行されます。2026年の新しい幕開けに、まずは自分の財産目録を作ってみるなど、後悔のない「納得の終活」へ向けて軽やかな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考資料

村岸 理美