4. 【コラム】年金制度改正によって「仕事と年金」の関係はどう変化する?

公的年金制度は、単に老後の受給額を決めるだけでなく、個人の働き方やキャリア、さらには人生設計そのものに大きく影響します。

2025年6月13日に、年金制度改正法が国会で成立しました。

この改正における見直し点の中から、特に働く人々の「仕事と生活」に密接に関わる項目をいくつかご紹介します。

4.1 社会保険の適用拡大①:短時間労働者の加入要件見直し

  • 賃金要件の撤廃:3年以内に、いわゆる「年収106万円の壁」が撤廃される方向です
  • 企業規模要件の撤廃:10年かけて段階的に対象企業が拡大されます(※)

※2025年7月時点では「従業員数51人以上」の企業が対象です。

4.2 社会保険の適用拡大②:個人事業所の対象範囲

  • 2029年10月から、個人事業所における社会保険の適用対象(※)が、従業員5人以上のすべての業種に拡大されます(ただし、2029年10月時点の既存事業所は当面除外)。

※2025年7月現在では「常時5人以上の従業員を使用する法定17業種」に加入が義務付けられています。

4.3 在職老齢年金制度の見直しについて

2026年4月より、年金が減額される基準額(※)が、現在の「月収51万円(2025年度の金額)」から「62万円」へと緩和されます。これにより、働きながらでも年金を満額受給しやすくなります。

※支給停止調整額:年金を受給しながら働く方の「賃金と老齢厚生年金」の合計額がこの金額を超えた場合、年金の支給額が調整されます。

4.4 保険料・年金額計算における賃金上限の引き上げ

厚生年金などの保険料や年金額を計算する際の賃金の上限(※1)が、「月65万円」から「75万円」へ段階的に引き上げられます(※2)。これによって、より現役時代の賃金実態に即した年金を受け取れるようになります。

※1 標準報酬月額:厚生年金や健康保険の保険料、年金額を算出するために、月々の報酬と賞与を一定の等級に区分した基準額のことです。
※2 2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へと引き上げられる予定です。