総務省が9月14日に公表した調査によると、65歳以上の就業者数は21年連続で増加し、過去最多となりました。
やりがいを求めて仕事を続ける人がいる一方、老後対策として働く人もいるでしょう。
本記事では、就業による老後対策について解説します。高齢者の平均貯蓄額や平均年金額なども紹介しますので、自身の老後の家計を考えるときの参考にしてください。
1. 65歳以上の就業状況【最新データ】
総務省の調査によると、65歳以上人口(2025年9月15日現在)は前年に比べわずかに減少した一方、総人口に占める割合は29.4%と過去最高となりました。
また、就業者数も930万人と過去最多を記録しています。
65歳以上人口が減少して就業者数が増えた理由は、就業率がアップしていることです。
特に、65歳以上70歳未満の人の就業率は2022年度に50%を超え、現在も上昇を続けています。
2. 65歳以上の就業者数が増加する社会的要因2つ
65歳以上も仕事を続ける理由は人によって異なりますが、日本の社会状況や高齢者の経済状況などが大きく影響していると言えるでしょう。
最初に主な社会的要因について解説します。
2.1 社会的要因1:少子高齢化による人手不足
社会的要因の1つ目は、少子高齢化による人手不足の深刻化です。
少子高齢化が進み、生産年齢人口は急減しています。その結果、人手不足が深刻化して働き手として高齢者の雇用ニーズが高まっています。
2.2 社会的要因2:国の支援による高齢者の就業機会の増加
政府は高年齢者雇用安定法を改正するなどして、働く意欲のある高齢者の雇用を後押ししています。
これまで企業に義務づけていた「65歳までの雇用機会の確保」をさらに強化し、努力義務として「70歳までの就業機会の確保」を設けました。
「65歳までの雇用機会の確保」では企業に定年延長や定年後の再雇用が求められますが、「70歳までの就業機会の確保」では業務委託などの措置も対象となります。
定年後に新しい職場で働くよりも、長年勤務してきた会社または関連会社で仕事ができることが高齢者の就業を後押ししています。
ここまで、65歳以上の就業状況と増加する社会的要因について解説しました。次章では、年金や貯蓄を含む高齢者の経済的要因と老後対策について解説します。
3. 65歳以上の就業者数が増加する経済的要因
内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、高齢者が仕事を続ける主な理由として「収入のため」と答えた人が全体の55.1%を占めました。
- 収入のため:55.1%
- 働くのは体によいから、老化を防ぐから:20.1%
- 自分の知識・能力を生かせるから:12.4%
- 仕事が面白いから:4.8%
- 仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから:3.0%
- 不明・無回答:4.6%
また、より長く働きたいと考える人も増えています。
「収入のために仕事を続けたい」「より長く働きたい」と考える理由は、年金や貯蓄が十分でないことが考えられます。平均的な年金額や貯蓄額は次の通りです。
3.1 シニアの平均年金額
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の平均受給額は次の通りです。
- 男性:厚生年金16万6606円、国民年金5万9965円
- 女性:厚生年金10万7200円、国民年金5万5777円
- 男女平均:厚生年金14万6429円、国民年金5万7584円
男性の厚生年金受給者で平均以上を受給している場合、老後の生活費をある程度年金で賄うことは可能かもしれません。しかし、国民年金受給者や女性の厚生年金受給者の場合、年金だけで生活していくのは難しいでしょう。
3.2 シニアの平均的な貯蓄額
総務省の「家計調査報告(2024年)」によると、夫婦世帯(65歳以上の2人以上世帯)の貯蓄額の平均値と中央値は次の通りです。
- 貯蓄額の平均:2509万円
- 貯蓄額の中央値:1658万円
平均額は2500万円を超えていますが、約半数の世帯は1658万円を下回っていることになります。また貯蓄が500万円以下の世帯も全体の20%以上を占めます。
年金額も貯蓄額も人や世帯によって大きく異なるため、仕事をしなくても悠々自適に暮らせる人がいる一方、仕事をしないと老後生活が成り立たないという人も一定数います。
4. 長く働くことが老後対策に有効
老後対策には、早くから貯金を始める、資産運用でお金を増やす(iDeCoやNISAの活用など)、厚生年金に加入して老齢厚生年金を受給する、などさまざまな方法があります。
事前に対策して多額のお金を蓄えたり十分な年金を受給できればいいですが、できなかったときは長く働くことが有効な老後対策となります。
65歳以降も仕事をして生活できれば、貯蓄を取り崩す必要もなく、年金を繰下げ受給して増やすことも可能です。また、厚生年金保険料を払って仕事を続ければ、毎年年金額もアップします。
5. まとめ
65歳以上の就業者数は、2024年に930万人に達し過去最多となりました。
働く高齢者が増える理由はさまざまですが、少子高齢化による人手不足で高齢者の労働参加が求められていることや、国が働く意欲のある高齢者の雇用を支援していることも一因です。
一方、高齢者が仕事を続ける主な理由として「収入のため」と答えた人が全体の55.1%で1位でした。
年金額や貯蓄額の格差は大きく、働かざるを得ないという人も多くいるでしょう。人生100年時代に備えて、定年後も働いて貯蓄の取り崩しを抑え年金を増やすという選択肢も検討してみましょう。
参考資料
- 総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」2025年9月14日公表
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書」
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
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総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」
西岡 秀泰