4. 年金の支給開始を早める「繰上げ受給」という選択肢も

繰下げ受給とは反対に、支給開始時期を早める「繰上げ受給」という選択肢もあります。

「1ヵ月繰り上げるごとに0.7%」の減額となりますが、65歳までの収入に不安がある人などは検討の余地があるでしょう。

ただし、65歳で受け取る場合や繰下げ受給を選択した場合に比べて、長生きするほど総受給額は少なくなります。

本来の年金が15万円の場合

本来の年金が15万円の場合

出所:日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成(「keisan 生活や実務に役立つ計算サイト」を使用)

5. まとめ

繰下げ受給は、長生きすればするほど有利に働く制度です。

しかし、年金の受給開始を遅らせるということは、その間の生活資金を自分でまかなう必要があることを意味します。

十分な貯蓄や就労収入がある人には適した選択肢ですが、そうでない場合はかえって生活を圧迫してしまうリスクもあるでしょう。

また、加給年金額の受給や税・保険料の増加といったデメリットも考慮する必要があります。

つまり「繰下げをすれば誰にとっても得になる」というわけではなく、ライフプランや健康状態、家族構成を踏まえたうえで判断しなければなりません。

老後の生活資金は年金だけで成り立つものではなく、退職金や個人の貯蓄、iDeCoやNISAなどの資産形成制度と組み合わせて考えることが現実的です。

参考資料

加藤 聖人