先週は年金支給日でしたが、現在年金を受け取るシニア世代において「もらえる年金の平均額」がいくらかご存知でしょうか。
この記事では、厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、平均年金額が高い都道府県と低い都道府県のランキングを紹介します。なぜこのような地域格差が生まれるのか、その理由や、2025年に成立した年金制度改正法が私たちの働き方にどう影響するのかを分かりやすく解説します。
1. 「老後2000万円問題」だけじゃない!ふつうの人の年金にも「地域格差」がある
会社員や公務員、またパートで特定適用事業所(※1)に働き一定要件を満たす人は、老齢厚生年金+老齢基礎年金(国民年金)の併給となります。
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の全受給権者(※2)の平均年金月額は14万6429円でした。
ただし、男女差・個人差があり、実際に受け取る金額は一人ひとり違います。
※1 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※国民年金部分を含む
1.1 厚生年金受給額の個人差
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
このように、厚生年金は幅広い受給額層に分布しています。同時に平均年金月額の「都道府県差」もあるのです。
2. 「ふつうの人の年金受給額」多い都道府県と少ない都道府県でくらべてみた
厚生年金の平均受給額は、都道府県で差があります。では、平均年金月額が「多い都道府県」「少ない都道府県」はどこなのでしょうか。
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、ランキング形式で見ていきましょう。
2.1 厚生年金の平均年金月額が「高い」都道府県【上位5都県】
- 1位 神奈川県:16万6578円
- 2位 千葉県:16万1368円
- 3位 東京都:15万9921円
- 4位 奈良県:15万8862円
- 5位 埼玉県:15万8003円
2.2 厚生年金の平均年金月額が「低い」都道府県【上位5県】
- 1位 青森県:12万4383円
- 2位 沖縄県:12万5435円
- 3位 秋田県:12万5476円
- 4位 宮崎県:12万5499円
- 5位 山形県:12万7133円
- 北海道:13万7572円
- 青森県:12万4383円
- 岩手県:12万9036円
- 宮城県:14万1145円
- 秋田県:12万5476円
- 山形県:12万7133円
- 福島県:13万2776円
- 茨城県:14万9104円
- 栃木県:14万5522円
- 群馬県:14万4777円
- 埼玉県:15万8003円
- 千葉県:16万1368円
- 東京都:15万9921円
- 神奈川県:16万6578円
- 新潟県:13万4716円
- 富山県:14万631円
- 石川県:13万7933円
- 福井県:13万6578円
- 山梨県:14万869円
- 長野県:14万743円
- 岐阜県:14万6072円
- 静岡県:14万7916円
- 愛知県:15万6775円
- 三重県:14万8059円
- 滋賀県:15万657円
- 京都府:14万8015円
- 大阪府:15万2686円
- 兵庫県:15万5454円
- 奈良県:15万8862円
- 和歌山県:14万2713円
- 鳥取県:12万9703円
- 島根県:13万1円
- 岡山県:14万2579円
- 広島県:14万7044円
- 山口県:14万4503円
- 徳島県:13万383円
- 香川県:14万453円
- 愛媛県:13万6630円
- 高知県:12万8607円
- 福岡県:14万2104円
- 佐賀県:13万480円
- 長崎県:13万3329円
- 熊本県:12万8956円
- 大分県:13万2853円
- 宮崎県:12万5499円
- 鹿児島県:12万9639円
- 沖縄県:12万5435円
都道府県別の平均年金月額において1位の神奈川県と47位の青森県では、その差は月額4万円以上になります。年間で考えると50万円を超えるため、地域ごとの格差は小さいとはいえないでしょう。
もちろん、厚生年金の受給額は住んでいる場所で決まるわけではありません。この差は、厚生年金受給額がどのように決まるかに理由があります。
3. 「みんなの年金はどうやって決まる?」報酬比例部分とは
厚生年金の受給額の計算には、現役時代の報酬(給与や賞与)と、年金加入期間が使われるため、個人差が出やすいしくみです。
厚生年金の報酬比例部分は、以下の計算式の合計で決まります。
- A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
- B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
厚生年金の受給額は、現役時代の報酬と加入期間の長さによって決まります。このしくみが、都道府県ごとの平均年金額の差に直結しています。
都市部では賃金水準が高い傾向があり、また、地域によって自営業や共働き世帯の比率も異なります。
こうした現役時代の働き方の違いが、年金の平均年金月額の差として現れているのです。
4. 「みんなの国民年金」ふつうはいくら?
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、保険料を納付した月数で決まります。そのため、厚生年金に比べて、個人差や男女差、そして地域による格差は大きくありません。
参考として、国民年金(老齢基礎年金)の都道府県別平均年金月額を見てみましょう。
4.1 都道府県別「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額
- 北海道:5万6723円
- 青森県:5万5369円
- 岩手県:5万8866円
- 宮城県:5万7706円
- 秋田県:5万7299円
- 山形県:5万8954円
- 福島県:5万8101円
- 茨城県:5万7604円
- 栃木県:5万7749円
- 群馬県:5万8791円
- 埼玉県:5万7252円
- 千葉県:5万7597円
- 東京都:5万6584円
- 神奈川県:5万7597円
- 新潟県:6万113円
- 富山県:6万1220円
- 石川県:6万170円
- 福井県:6万532円
- 山梨県:5万7477円
- 長野県:6万262円
- 岐阜県:5万9501円
- 静岡県:5万9398円
- 愛知県:5万8290円
- 三重県:5万9675円
- 滋賀県:5万9435円
- 京都府:5万6525円
- 大阪府:5万5463円
- 兵庫県:5万7447円
- 奈良県:5万7246円
- 和歌山県:5万6067円
- 鳥取県:5万9770円
- 島根県:6万497円
- 岡山県:5万9891円
- 広島県:5万9286円
- 山口県:5万9406円
- 徳島県:5万7095円
- 香川県:6万25円
- 愛媛県:5万8059円
- 高知県:5万6268円
- 福岡県:5万6622円
- 佐賀県:5万9344円
- 長崎県:5万6876円
- 熊本県:5万8172円
- 大分県:5万6685円
- 宮崎県:5万7571円
- 鹿児島県:5万7963円
- 沖縄県:5万2837円
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、5万円から6万円台が中心で、全国平均は5万7700円です。
この金額だけで老後の生活費をまかなうのは、現実的に厳しいと感じる人も多いでしょう。
そのため、厚生年金の上乗せがない自営業者やフリーランスの方などは特に、現役時代から計画的な資産形成を始めることが大切です。
5. 「みんなの年金」これからどう変わる?
都道府県による年金額の差は、現役時代の働き方や賃金水準が直接反映された結果です。
つまり、公的年金のしくみは、単に老後の受給額を決めるだけでなく、私たちの働き方やキャリアプラン、そして人生設計そのものと深く結びついているのです。
2025年6月13日に成立した年金制度改正法は、働く人々の「仕事と暮らし」に大きな影響を与える見直しを多く含んでいます。その主なポイントを見ていきましょう。
5.1 社会保険の加入対象の拡大①短時間労働者の加入要件の見直し
- 賃金要件の撤廃:3年以内にいわゆる「年収106万円の壁」撤廃へ
- 企業規模要件の撤廃:10年かけて段階的に対象の企業を拡大(※)
※2025年7月時点では「51人以上」
5.2 社会保険の加入対象の拡大②個人事業所の適用対象の拡大
- 2029年10月から個人事業所の社会保険の適用対象(※)が、従業員5人以上の全業種に拡大(2029年10月時点における既存事業所は当面除外)
※2025年7月現在「常時5人以上の者を使用する法定17業種」は加入必須。(法定17業種とは:①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業
5.3 在職老齢年金の見直し
2026年4月から、年金が減額される基準額(※)が「月収51万円(2025年度の金額)→62万円」に緩和。働きながらでも年金を満額もらいやすくなります。
※支給停止調整額:年金を受給しながら働くシニアの「賃金+老齢厚生年金」の合計がこの金額を超えると、年金支給額が調整される。
5.4 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
厚生年金などの保険料や年金額の計算に使う賃金の上限(※1)を「月65万円→75万円」へ段階的に引き上げ(※2)。従来よりも現役時代の賃金に見合った年金を受給できるようになります。
※1 標準報酬月額:厚生年金や健康保険の保険料、年金額を計算するために、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った基準額のこと
※2 2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に引き上げ
6. まとめにかえて
この記事では、厚生年金が平均14万円台でも、都道府県によって大きな格差があることや、国民年金だけでは生活が厳しい現実をお伝えしました。将来の年金額は、現役時代の働き方や賃金水準に直接影響されるため、一人ひとりが自分のキャリアをどう築くかが重要です。
2025年の年金制度改正は、私たちの働き方を大きく変えるきっかけになります。年金は他人事ではなく、自分自身の人生設計に深く関わるものです。将来のために、公的年金に加えて、iDeCoやNISAなども活用しながら、計画的な資産形成をはじめてみるのも良いかもしれません。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構 年金用語集「は行 報酬比例部分」
- 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」に関するQ&A(キャリアアップ助成金関係)
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
村岸 理美