みなさまの身近にいるシニア世代の方で、仕事に就いている人はいますか。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数・就業率は上昇しており、65〜69歳の男性は62.8%、女性は44.7%が就業しています。

《働くシニア》は増加している「男女別の就業状況の内訳」

《働くシニア》は増加している「男女別の就業状況の内訳」

出所:厚生労働省「令和7年版高齢社会白書」

年金受給開始後も、多くのシニア世代が意欲的に働き続けるなか、複数の仕事を持つケースも増えてきました。こうした多様な働き方を支援するため、2022年1月1日より「雇用保険マルチジョブホルダー制度」がはじまっているのはご存知でしょうか。

「《働くシニア》にどんなメリットがあるのか?」注意点もふまえて解説します。

制度の概要:マルチジョブホルダー制度って何?

従来の雇用保険制度は、原則として1つの事業所で「週の所定労働時間が20時間以上あり、かつ31日以上の雇用見込みがあること」が加入条件です。これに対し、マルチジョブホルダー制度では、以下の3つの条件をすべて満たす場合に、雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。

  1. 複数の事業所で雇用される65歳以上の労働者であること。
  2. 2つの事業所の週所定労働時間を合計して20時間以上であること。ただし、1つの事業所での週所定労働時間は5時間以上20時間未満である必要があります。
  3. 2つの事業所それぞれの雇用見込みが31日以上であること。

たとえば、65歳以上の労働者で、

  • 事業所Aで週15時間
  • 事業所Bで週8時間
  • 事業所Cで週6時間

のように複数の職場で合計週20時間以上働いており、それぞれの事業所で31日以上雇用見込みがある場合、この制度の対象となります。また、3つ以上の事業所で働いている場合、本人が雇用保険に加入する2つの事業所を選んで手続きを行います。