4. 「在職老齢年金制度」が2026年度に見直し。支給停止の基準額が大幅引き上げへ

老後の収入源として年金を受け取りながら働く人にとって、「在職老齢年金制度」は非常に重要な制度です。2026年度から、この制度に見直しが入ることが決まっており、特に60歳代前半の就労世代には大きな影響があります。

4.1 在職老齢年金とは?

在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りつつ、会社員などとして働いている人が対象となる制度です。

給与や賞与などの「報酬」と年金の合計額が一定の基準額を超えると、その超過分に応じて年金の一部、あるいは全部が支給停止となります。

近年では「働き控えを招いている」との批判も多く、制度の見直しが求められていました。

4.2 支給停止の基準額が大幅に引き上げられる

在職老齢年金の「支給停止調整額」(いわゆる年金が満額支給される収入の上限額)は、以下のように段階的に引き上げられてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

今回の見直しにより、2026年4月以降は月額62万円までの収入であれば、年金が全額支給されることになります。

これまで年金支給額が一部または全額カットされていた人にとっては、大きなプラスになるでしょう。

また、制度改正によって「働くほど損をする」というイメージが薄れ、60歳以降の労働意欲を高める効果が期待されています。

特に、年金を受け取りながら再雇用などで働いている人にとっては、収入と年金の両立がしやすくなる点がメリットです。

とはいえ、実際にどのくらい働くか、いつまで働き続けるかは人それぞれ。

健康状態やライフプラン、家族の状況などを踏まえて、柔軟に働き方を見直すことが大切です。

5. 年金の仕組みや家計の実態を把握しよう

老後の生活は、現役時代のように収入が伸び続けるわけではありません。

年金収入だけでは家計が赤字になるケースも多く、貯蓄の取り崩しや働き方の見直しが避けられない現実があります。

今回紹介したデータからも、65歳以上・無職夫婦世帯の家計は毎月数万円の赤字となっており、長く安定した生活を送るためには、ある程度の貯蓄が必要となるでしょう。

また、2026年度からは在職老齢年金制度の見直しにより、年金と就労収入を両立しやすくなる環境も整いつつあります。

年金の仕組みや家計の実態を正しく知り、ゆとりある老後に向けて準備を始めていきましょう。

参考資料

加藤 聖人