2025年5月に行われた第217回通常国会において、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が提出され、6月に成立しました。
その中の1つに、「将来の基礎年金水準の低下への対応」があります。
基礎年金は私たち国民の老後の生活を支える重要な制度です。
しかし、この給付水準が経済の低迷により将来的に低下する可能性が指摘されています。
そこで今回の法改正では、その水準を底上げするために厚生年金保険料の積立金部分を活用する方針が示されました。
この方針に対して「厚生年金保険に加入していない人の基礎年金も含めて底上げをするために、厚生年金加入者の保険料の積立金を使用するのは『流用』ではないか」という疑問の声も上がっています。
本記事では、改正法案の具体的な内容と、私たちの暮らしへの影響について解説していきます。
1. 改正法案の内容
まずは、改正法案で盛り込まれた「基礎年金水準の低下への対応」の詳細を解説をしていきます。
1.1 問題視されていること
日本の年金制度には、少子高齢化が進んでも制度が破綻しないように、年金の伸びを自動的に抑える「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されています。
これは現役世代の減少や平均余命の伸びに合わせて年金の給付水準を調整する、ブレーキのような仕組みです。
しかし、もし今後の日本の経済成長が長期間停滞してしまうと、このマクロ経済スライドによるブレーキが効きすぎてしまい、全国民の生活を支える「基礎年金」の水準が、大きく下がってしまうことが懸念されています。
基礎年金の給付水準が下がることにより、特に年金額に占める基礎年金の割合が大きい人や、所得が低い人の老後の生活が厳しくなることが予想されています。
このように、老後の生活の基礎となる基礎年金の給付水準が低下してしまうことが、問題視されていました。