3. 年金を受給しながら働くシニアが右肩上がり<10年で就業率10%以上アップ>

シニアの就労を後押しするしくみの整備が進むこんにち。

内閣府が公表した「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数および就業率は右肩上がりの傾向となっています。

各年齢階級の就業率(男女全体)を、2014年と2024年で比較すると以下の通りです。

3.1 年齢階級別就業率:2014年→2024年

  • 65歳~69歳:40.1%→53.6%(+13.5pt)
  • 70歳~74歳:24.0%→35.1%(+11.1pt)
  • 75歳以上:8.1%→12.0%(+3.9pt)

特に男性では、60歳~64歳で84.0%、65歳~69歳で62.8%が仕事についていることも分かっています。老齢年金を受給しながら、体力やライフスタイルに合わせて就労を続けるシニアが増えている様子が浮き彫りとなりました。

年金を受給しながら働く場合、「在職老齢年金制度(※)」による年金額の調整には留意が必要です。

※在職老齢年金制度:60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら就労する場合、「年金月額+月収・賞与の合計額」が一定額(2025年度は51万円)を超えると年金の一部または全額が支給停止となるしくみ。(老齢基礎年金は減額の対象外です)

4. 働くシニア 年金全額受給可能な場合、一部支給停止となる場合をそれぞれ紹介

日々の生活費や長く続く老後生活のゆとりのために、年金受給中も働くシニアが増えています。

しかし、前の章でもお伝えしたように年金を受給しながら働く場合は、ある一定額を超えると年金受給額の一部または全額が受給停止となることに注意が必要です。

最後に、2つの事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

4.1 Aさんの場合:給与24万円(月額)、賞与42万円(年間)、老齢厚生年金10万円(月額)、老齢基礎年金6万円(月額)

Aさんの場合、給与と老齢厚生年金の合計が1月あたり37.5万円で、支給停止調整額の51万円以下であるため、年金を全額受給できます。

※在職老齢年金の計算の対象となる給与には、1月あたりの賞与額(1年間の賞与を12で割った金額)を含みます。また、税金等を控除する前の額で計算されます。

4.2 Bさんの場合:給与38万円(月額)、賞与144万円(年間)、老齢厚生年金14万円(月額)、老齢基礎年金6万円(月額)

一部が支給停止となるケース

一部が支給停止となるケース

出所:日本年金機構「年金Q&A (老齢厚生年金全般)」

Bさんの場合、給与と老齢厚生年金の合計が1月あたり64万円で、支給停止調整額の51万円を13万円超えています。
そのため、支給される老齢厚生年金から13万円の2分の1の額である6.5万円が支給停止されます。

※在職老齢年金の計算の対象となる給与には、1月あたりの賞与額(1年間の賞与を12で割った金額)を含みます。また、税金等を控除する前の額で計算されます。

参考資料

三石 由佳