現在実施期間中である春の2025年度国家公務員採用総合職試験は、1万2028人が申し込みました。合格発表は5月30日を予定しています。総合職の試験は秋の開催も予定しており、8月から受付開始、12月に合格発表となる予定です。
国家公務員は、民間企業とは異なる給与体系となっています。人事院では、実際に支給されている給与のモデルを紹介しています。国家公務員の総合職の職員の年収モデルによれば、1年目職員の年収は約570万円とのことです。
勤務先や職歴によって、国家公務員の給与はどのように決定されているのでしょうか。この記事では、国家公務員の給与の仕組みや年収について解説します。
1. 国家公務員の給与の仕組み
国家公務員の給与は、労働基本権が制約される代わりに、社会情勢に応じた適正な給与が確保されるようになっています。具体的には、国家公務員の給与を民間企業の給与水準に準拠するように勧告する「人事院勧告」をもとに決定されています。
国家公務員の給与の決まり方や、直近の見直しについて見ていきましょう。
1.1 国家公務員の給与の決まり方
国家公務員の給与は、民間企業の基本給に該当する「俸給」と、各種手当で構成されています。
基本給である俸給は、職種や仕事の複雑さ・困難さ、責任の度合いによって分かれているのが特徴です。国家公務員は、行政職や公安職、医療職などの職種に応じて「俸給表」が定められており、以下の17種類に分かれています。
- 行政職俸給表(一)
- 行政職俸給表(二)
- 専門行政職俸給表
- 税務職俸給表
- 公安職俸給表(一)
- 公安職俸給表(二)
- 海事職俸給表(一)
- 海事職俸給表(二)
- 教育職俸給表(一)
- 教育職俸給表(二)
- 研究職俸給表
- 医療職俸給表(一)
- 医療職俸給表(二)
- 医療職俸給表(三)
- 福祉職俸給表(別表第九)
- 専門スタッフ職俸給表(別表第十)
- 指定職俸給表(別表第十一)
そして、俸給表には職務の複雑さ・困難さや責任の度合いに応じて「級」が、勤続年数や年齢、勤務成績に応じて「号俸」が定められています。係長や課長のように昇進していくと級数が増え、俸給が増えていきます。また、勤続年数が長くなっていくと号俸数が増え、俸給が増える仕組みです。行政職の場合、級数は10級まで、号俸数は125級まで存在します。
国家公務員には、複数の手当が用意されています。主な手当は以下のとおりです。
- 扶養手当:扶養親族のある職員に支給される。
- 住居手当:借家等に居住する職員等に支給される。
- 通勤手当:通勤のため、交通機関等や自動車等を使用している職員に支給される。
- 単身赴任手当:異動等に伴い、配偶者等と別居して単身で生活することとなった職員に支給される。
- 地域手当:主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給される。(東京23区は月給の20%)
- 広域異動手当:広域的な異動等を行った職員に対して、官署間の距離に応じ、異動等の日から3年間支給される。
- 超過勤務手当:正規の勤務時間を超えて勤務した職員に対し、勤務時間数に応じて支給される。
- 本府省業務調整手当:本府省の業務に従事する課長補佐級から係員級の職員に支給される。
また、「期末手当」「勤勉手当」として、民間企業のように賞与も支給されます。期末手当は定額分、勤勉手当は人事評価の一環である考課査定分となっており、6月1日と12月1日時点で在職の国家公務員に支給されるようになっています。
1.2 給与制度のアップデート
国家公務員の給与については、時代に即したものになるよう、常に制度がアップデートされています。
たとえば、2024年度は民間給与の実態を反映し、月収で約4.4%の給与改善がなされ、高水準のベースアップを実現しました。また、新卒初任給を以下のように10%以上引き上げ、採用力の強化に努めました。
- 総合職(大卒):23万円(+14.6%)
- 一般職(大卒):22万円(+12.1%)
- 一般職(高卒):18万8000円(+12.8%)
また、通勤手当については支給限度額が在来線利用で5万5000円、新幹線・特急で2万円だったのを、在来線と新幹線・特急あわせて上限15万円に拡大しています。
一方で、以下のように一部の職員にとっては改悪ともとれるアップデートもしているようです。
- 子どもに対する扶養手当を2026年度までに1万3000円に引き上げる代わりに配偶者に対する扶養手当を廃止
- 地域手当の単位を市区から都道府県単位に変更
次章では、国家公務員の年収モデルについて解説します。
2. 新卒・総合職で「570万円」になるケースも…国家公務員の年収モデルを紹介!
国家公務員は、毎年どれくらいの給与を受け取っているのでしょうか。人事院が公開する年収モデルを詳しく見ていきましょう。
2.1 本府省・地方勤務別の年収モデル
はじめに、本府省勤務の職員と、地方勤務の職員の年収モデルを見てみましょう。官僚と呼ばれる「総合職」、事務に従事し地方でも勤務する「一般職」の新卒職員に加えて、係長・課長級の職員の給与も確かめます。
なお、係長級の給与額には超過勤務手当(月20時間分)が含まれます。また、課長級の給与額には、管理職手当が含まれます。
〈本府省勤務の場合〉
総合職・大卒(例)
- 月額:約37万円
- 年間給与:約570万円
一般職・大卒(例)
- 月額:約36万円
- 年間給与:約550万円
係長級(例)
- 月額:約47万円
- 年間給与:約730万円
課長補佐級(例)
- 月額:約59万円
- 年間給与:約930万円
〈地方機関勤務の場合(横浜市、大阪市等の例)〉
一般職・大卒(例)
- 月額:約32万円
- 年間給与:約500万円
一般職・高卒(例)
- 月額:約28万円
- 年間給与:約430万円
係長級(例)
- 月額:約44万円
- 年間給与:約700万円
課長級(地方機関)(例)
- 月額:約51万円
- 年間給与:約830万円
本府省に勤務する総合職の新卒職員は、年収が約570万円です。一般職でも約550万円と、総合職・一般職で比較しても大きな差は見られません。順調に昇進して係長級になれば約730万円、課長補佐まで昇進すれば約930万円と年収1000万円に近い金額まで収入がアップします。
地方勤務の場合、本府省勤務に比べると全体的に給与が低めの傾向です。とくに大卒の新卒職員が年収約500万円なのに対し、高卒の新卒職員は約430万円と70万円の差があります。学歴が収入に与える影響は大きいようです。
また、課長補佐級の年収は約830万円と、本府省の課長補佐級職員と比較して100万円ほど差が開いています。横浜市や大阪市といった中核市に勤めていても、本府省職員との収入差はなかなか埋まらないことがわかります。
2.2 職歴ありの場合の年収モデル
次に、国家公務員になる前に職歴がある人の年収を見てみましょう。いずれも地方機関に勤務する一般職で、大卒後6年、大卒後10年の係長級、大卒後10年の課長補佐級の職員の年収を確かめます。
大卒後6年(例)
- 月額:約39万円
- 年間給与:約600万円
大卒後10年・係長級(例)
- 月額:約45万円
- 年間給与:約700万円
大卒後10年・課長補佐級(例)
- 月額:約54万円
- 年間給与:約840万円
収入額は、新卒で就職するよりもやや高水準です。大卒後6年での就職は、新卒職員と比べて年間100万円ほど、係長級は月1万円ほど、課長補佐級は年間10万円ほどの増額となっています。国家公務員のなり手不足に対応するため、中途採用にはとくに力を入れているようです。
次章では、国家公務員のワークライフバランスについて解説します。
3. 国家公務員のワークライフバランスは?
収入が比較的安定しており、手当や福利厚生が充実したイメージの国家公務員ですが、仕事と家庭との両立を目指すワークライフバランスは決して充実しているとはいい切れません。
近年、国家公務員の申込者数は減少傾向にあります。2012年の申込者数は6万人超でしたが、2023年には4万人台まで減少しました。
理由としては、業務内容に対する給与額の低さや、長時間労働などの労働環境の厳しさなどが挙げられています。
とくに職員が厳しさを実感しているのが「国会対応」です。人事院の調査によると、2021年度時点で31の府省が「国会対応への超過勤務の状況は前年度と全く変わっていない」9府省が「悪化した」と回答しています。
国家公務員「国会対応への超過勤務状況」前年度と比べて…7/7
出所:人事院「国会対応業務に係る各府省の実態について (全府省(44府省等)に対するアンケート(令和4年11月~令和5年1月実施)の結果)」
要因は、質問通告の遅さや、答弁書の回答期限の短さ、各省庁との調整の長期化などとされています。とくに、国会議員が文書で質問を送付する「質問主意書」への回答は期限が7日間とされており、日常業務と並行しながらタイトなスケジュールで回答を提示しなければなりません。
答弁作成に時間が取られてしまい通常業務ができず、結果的に超過勤務が常態化してしまっている部署もあるようです。
現役職員のこうした不満を汲み取り、給与や処遇にどのように反映させていくかが、今後の国家公務員のワークライフバランスの充実に向けた課題といえそうです。
4. まとめ
国家公務員は新卒時点から安定した収入を得られますが、さまざまな地方で勤務する必要がある点や国会対応のように激務が存在する点などが懸念され、申込者数はなかなか増えていません。給与と業務量のバランスの見直しや旧態依然とした業務体系の脱却などが求められるでしょう。
参考資料
- 人事院「2025年度国家公務員採用総合職試験の申込状況等について」
- 人事院「行政職俸給表 イ 行政職俸給表(一)」
- 人事院「国家公務員の給与制度の概要」
- 自由民主党「[国家公務員給与法]公務員全体の処遇改善が必要」
- 人事院「国会対応業務に係る各府省の実態について (全府省(44府省等)に対するアンケート(令和4年11月~令和5年1月実施)の結果)」
石上 ユウキ