年末年始、銀行は「死亡届」の提出や、「相続」の相談件数が増える傾向にあります。ご家族が集まりやすいタイミングで、さまざまな手続きを進めるためでしょう。

「もし、亡くなられたご家族が銀行の「貸金庫」を利用していたら、貸金庫の中身は《誰が・いつ・どのように》確認するの?」

「誰が、どの財産をいくら相続するのか話し合う前に、貸金庫の中身を確認できるの?」

本記事では、銀行の貸金庫の契約者が死亡した場合の手続きフローをご紹介します。

1. 亡くなられた方が銀行の貸金庫を利用していたら早く「死亡届」を提出すべき

【写真全7枚】銀行の貸金庫。法定相続人の範囲や、メガバンクの貸金庫使用料をご紹介1/7

銀行の貸金庫

Emiel Lops Photography/shutterstock.com

もし、亡くなられたご家族が銀行の貸金庫を利用していたなら、速やかに銀行へ死亡届を提出しましょう。貸金庫に「遺言書」が保管されている可能性があるからです。

故人が遺言書を準備しており、それが有効なものであれば、遺言書の内容に基づいて相続を進める必要があります。

また、貸金庫に現金が保管されている場合、この現金も相続財産となるため、相続人間で「誰が・どの財産を・いくら」承継するのかを話し合う前に、故人の全財産を洗い出すためにも、早い段階で死亡届を提出しましょう。

ちなみに、貸金庫の利用規約にも記載されていますが、多くの銀行が貸金庫への現金保管を禁止しています。

しかし、実際に契約者が貸金庫に何を入れているのか銀行側は把握できません。現金の有無を含め、相続の対象となる財産に関するものが入っているかどうかは、相続人(または遺言執行者)が貸金庫を開けて確認するしかないのです。

2. 銀行へ死亡届を提出してから貸金庫の中身を確認するまでのフロー

では、銀行に死亡届を提出してから、実際に貸金庫の中身を確認するまでのフローはどのようになっているのか、確認していきましょう。

2.1 銀行へ死亡届を提出する

貸金庫を契約している銀行へ、死亡届を提出します。電話でも構いません。銀行は死亡届が提出された後、すぐに貸金庫を含む全ての取引を停止します。

2.2 銀行へ貸金庫開扉に必要な書類を提出する

銀行へ死亡届を提出すると、相続に必要な書類や手続きの案内が届きます。相続にあたり貸金庫を開けるために必要な書類を銀行に提出してください。

◆銀行に提出する相続届一式◆

  • 相続による貸金庫の開扉依頼書(※):相続人全員の署名と実印押印が必要。貸金庫を開ける者の名前も要記載
  • 故人の16歳~死亡までの連続した戸籍謄本等:法定相続人を確定するため
  • 相続人全員の印鑑証明書:法定相続人の本人確認

貸金庫の中身を確認するまでは、相続財産が確定していないため、ここでは相続による貸金庫の開扉依頼書となります。別途、預貯金等の相続届がありますのでご留意ください。

※銀行により書類名が異なります。

法定相続人とは?

法定相続人とは、民法で定められている相続できる人のこと。亡くなった人の配偶者と一定の血族人(子・父母・兄弟姉妹など)が該当します。

相続人の範囲と順位は下図のとおり定められています。

2.3 銀行の案内に沿って指定された相続人が貸金庫を開ける=解約

相続による貸金庫開扉依頼書で指定された相続人は、銀行に来店日時を連絡します。当日、指定された本人確認書類等を持参し来店してください。

指定された相続人が来店し、相続人全員の同意があるか、来店された相続人が本人であるかなどの確認が完了できたら、銀行員の案内にしたがって貸金庫室に入室します。

故人の貸金庫の箱を取り出し、専用ブースで中身を確認しましょう。貸金庫の箱が空っぽになったら、解約となります。

3. 疑問:貸金庫の鍵がない場合はどうするの?

故人が持っているであろう貸金庫の鍵が見当たらなくても、銀行で保管している副鍵があるので問題ありません。

貸金庫と鍵3/7

貸金庫と鍵

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【ご参考までに…】

銀行の貸金庫の鍵は「正鍵・副鍵」の2本セットです。貸金庫契約時に、正鍵を契約者へお渡しし、副鍵は契約者に確認してもらいながら専用の封筒に入れて封緘します。

割印が押印された封緘袋は、銀行側で厳重に保管されます。

銀行の貸金庫の鍵は、合鍵(スペアキー)を作れません。詳しくは、ご利用の銀行の貸金庫利用規約で確認しましょう。

4. 疑問:貸金庫を契約しているかわからない場合は?

亡くなられたご家族が、どこでどのような取引をしているのかわからないケースもあるでしょう。

貸金庫の契約があるかどうかは、銀行に死亡届を提出した段階でわかりますので、貸金庫がそのまま放置されることはありません。

また、一つの支店に死亡届を提出すると、同一銀行の別支店で取引がないかも確認してもらえます。

5. 疑問:貸金庫の代理人なら死亡届を提出する前に中身を確認できる?

契約者の希望があれば貸金庫契約に代理人を登録することができます。代理人は契約者と同じように、貸金庫の開扉を行えます。

ただし、前述のとおり、貸金庫の鍵は契約者に正鍵を交付し、副鍵は銀行保管となります。貸金庫の鍵は1つしかお渡ししていないため、代理人は契約者から貸金庫の正鍵を借りなければいけません。

また、貸金庫への入室記録は銀行に残りますので、相続手続き時に相続人間でトラブルになる可能性も。すみやかに死亡届を提出し、正しい手順で貸金庫の中身を確認しましょう。

6. 疑問:貸金庫の料金はどうなるの?

貸金庫は使用料がかかります。前払いとなり、1年に1度や半年に1度の口座引き落としとなるケースが多いでしょう。

一般的に、相続手続きにより貸金庫を解約する場合、解約日の属する月の翌月から月割計算され、相続人に返戻されます。

6.1 ご参考:貸金庫の料金はどれくらい?

貸金庫の使用料は、銀行や支店によって異なります。また、貸金庫の箱のサイズによっても金額が異なります。

預金残高等の取引状況に応じて貸金庫の使用料が割引されるケースもありますので、貸金庫の利用を検討されている方は、しっかり比較すると良いでしょう。

三井住友銀行の貸金庫料金の例(消費税込)

貸金庫料金の例4/7

貸金庫料金の例

出所:三井住友銀行「貸金庫」をもとにLIMO編集部作成

三井住友銀行の貸金庫の年間使用料は上記のとおり。「箱が大きくなる=たくさん入る」ほど、料金が高くなっています。

こちらは一例であり、支店ごとに取り扱っている箱のサイズ等が異なります。

みずほ銀行の貸金庫料金の例(消費税込)

貸金庫料金の例5/7

貸金庫料金の例

出所:みずほ銀行「貸金庫」をもとにLIMO編集部作成

みずほ銀行の貸金庫の年間使用料は上記のとおり。ワンサイズのみ公表されており、こちらも支店ごとにサイズや料金が異なります。

7. 遺言書で「遺言執行者」が指定されている場合は?

有効な遺言書がある場合、遺言執行者が指定されていれば貸金庫の中身の確認(=契約者死亡による解約手続き)は遺言執行者に一任することができるのでしょうか。結論から申し上げると、一任できる場合とできない場合があります。

7.1 遺言執行者が貸金庫の中身を確認できる場合

遺言書に「遺言執行者に貸金庫の解約手続きを一任する」旨が記載されている場合、遺言執行者にて貸金庫の中身のチェックや解約手続きを任せられます。

7.2 遺言執行者が貸金庫の中身を確認できない場合

一方、遺言書に「遺言執行者に貸金庫の解約手続きを一任する」旨が記載されていない場合、相続人全員の同意がなければ故人の貸金庫を開扉できません。

また、故人が遺言書を貸金庫に保管している場合も、遺言書を確認できないため遺言執行者による貸金庫の開扉手続きはできません。公正証書遺言や銀行の遺言信託などを利用していれば、遺言書の原本は公証役場で保管されるため相続手続きがスムーズです。自筆遺言でも「自筆証書遺言書保管制度」を利用していれば、法務局で遺言書の原本が保管されているため、こちらも相続手続きがスムーズでしょう。

7.3 ご参考:遺言書ってどんなことが書いてあるの?(例:自筆遺言)

自筆遺言の見本(本文と財産目録)6/7

自筆遺言の見本(本文と財産目録)

出所:法務局「自筆証書遺言書の様式」

自筆遺言の見本(別紙)7/7

自筆遺言の見本(別紙)

出所:法務局「自筆証書遺言書の様式」

8. まとめにかえて

本記事では、銀行の貸金庫を利用しているご家族が亡くなった場合の死亡届~貸金庫の中身を確認するまでのフローを確認しました。

「貸金庫」の性質上、中に何が入っているのかは契約者(または契約者が指定した代理人)しか知り得ません。

しかし、故人の大切なご資産を平等に、あるいは故人のご意向に沿った形で相続するためにも、すみやかに貸金庫を開けて中身を明らかにする必要があります。

亡くなったご家族が銀行の貸金庫を利用しているかどうかわからない場合は、銀行に死亡届を提出すれば判明しますので、貸金庫契約の有無に関わらず、早めに死亡届を提出すると良いでしょう。

参考資料

和田 直子