7. 遺言書で「遺言執行者」が指定されている場合は?

有効な遺言書がある場合、遺言執行者が指定されていれば貸金庫の中身の確認(=契約者死亡による解約手続き)は遺言執行者に一任することができるのでしょうか。結論から申し上げると、一任できる場合とできない場合があります。

7.1 遺言執行者が貸金庫の中身を確認できる場合

遺言書に「遺言執行者に貸金庫の解約手続きを一任する」旨が記載されている場合、遺言執行者にて貸金庫の中身のチェックや解約手続きを任せられます。

7.2 遺言執行者が貸金庫の中身を確認できない場合

一方、遺言書に「遺言執行者に貸金庫の解約手続きを一任する」旨が記載されていない場合、相続人全員の同意がなければ故人の貸金庫を開扉できません。

また、故人が遺言書を貸金庫に保管している場合も、遺言書を確認できないため遺言執行者による貸金庫の開扉手続きはできません。公正証書遺言や銀行の遺言信託などを利用していれば、遺言書の原本は公証役場で保管されるため相続手続きがスムーズです。自筆遺言でも「自筆証書遺言書保管制度」を利用していれば、法務局で遺言書の原本が保管されているため、こちらも相続手続きがスムーズでしょう。

7.3 ご参考:遺言書ってどんなことが書いてあるの?(例:自筆遺言)

自筆遺言の見本(本文と財産目録)

自筆遺言の見本(本文と財産目録)

出所:法務局「自筆証書遺言書の様式」

自筆遺言の見本(別紙)

自筆遺言の見本(別紙)

出所:法務局「自筆証書遺言書の様式」

8. まとめにかえて

本記事では、銀行の貸金庫を利用しているご家族が亡くなった場合の死亡届~貸金庫の中身を確認するまでのフローを確認しました。

「貸金庫」の性質上、中に何が入っているのかは契約者(または契約者が指定した代理人)しか知り得ません。

しかし、故人の大切なご資産を平等に、あるいは故人のご意向に沿った形で相続するためにも、すみやかに貸金庫を開けて中身を明らかにする必要があります。

亡くなったご家族が銀行の貸金庫を利用しているかどうかわからない場合は、銀行に死亡届を提出すれば判明しますので、貸金庫契約の有無に関わらず、早めに死亡届を提出すると良いでしょう。

参考資料

和田 直子