4. 【ご参考】日本の富裕層が増えた3つの背景
それでは、なぜ日本で富裕層が増え続けているのでしょうか。
続いてその背景について見て行きましょう。
日本で富裕層が増え続けている理由として、様々な要因が考えられますが、今回は以下のような要因をあげてみます。
4.1 【背景1】国内外の株価上昇
皆さんもご承知の通り米国の株式市場は長期的に堅調に推移し、ダウ工業平均株価やS&P500といった株価指数は、でこぼこはありながらも長期的に上昇トレンドとなっていました。
また、米国だけではなく、世界的な株高が継続してきたという背景もあるかと思います。
富裕層はそうでない世帯と比較して一般的に株式の保有額やその比率が高いことから、株式市場の環境が資産額の増減に影響を及ぼします。
したがって、世界的な株高の背景は最も大きな背景としてあげられるでしょう。
4.2 【背景2】非課税枠のある投資制度の充実による資産形成機会の拡大
また、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度の登場も無視はできません。旧NISAは以前からありましたが、やはり多くの人が投資を始めたきっかけというと、2018年にはじまった「つみたてNISA」は多いのではないでしょうか。
NISA制度は2024年より「新しいNISA(いわゆる新NISA)」として展開されています。10年近い期間を経て、こうした非課税枠のある投資制度の拡充により、個人が資産形成に関わる機会は増えてきました。
10年前に投資に興味がなかった人も、NISAなどの制度をきっかけとして証券投資をはじめたという人は多かったのではないでしょうか。先ほども指摘した通り、世界的に株価はこれまで長期にわたり上昇傾向にあり、早い段階で資産形成を始めた人ならば相応の利益が出ていることが推測できます。
4.3 【背景3】相続や贈与によるもの
富裕層になった人のなかには、相続や贈与から多額の資金を手に入れた人もいるでしょう。
高齢化が進む日本では、親などから資産を受け継ぐ人が増え、結果として富裕層の数が増えている可能性もあります。
一般的な家庭であっても「遺産分割で祖父母の遺産を継いだ」という人も少なくありません。
こういった株式市場の好調さ、資産形成の機会拡大、また人口動態の変化などが、富裕層の増加に寄与した可能性があります。結果として、本人の意図しないところで富裕層の仲間入りを果たした、という人もいるでしょう。
5. まとめにかえて
今回は、資産運用における「富裕層に共通する3つの特徴」や、日本にいる富裕層の割合について解説しました。
お金持ちの方は、「みんなが選んでいるから」という理由で決断せず、自分に合った投資先を探すために「正しい情報」を調べたり、専門家の意見を聞いたりすることが多い傾向にあります。
今後、資産運用や資産形成を行うときの、参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
安達 さやか
執筆者
株式会社モニクルリサーチ
LIMO編集部記者/一種外務員資格(証券外務員一種)/元証券会社社員
1985年生まれ。福岡県出身。筑紫女学園短期大学英文科(現・筑紫女学園大学)を卒業後、2005年に日興コーディアル証券株式会社(現・SMBC日興証券株式会社)に入社。ファイナンシャルアドバイザーとして、主に富裕層の個人顧客や法人に向けて、株式や債券、投資信託、保険商品などライフプランに寄り添った資産運用を提案する業務に従事した。一種外務員資格(証券外務員一種)保有。
現在は、株式会社モニクルリサーチのメディア編集本部・LIMO編集部に所属。「くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~」では、人事院、内閣府(金融庁、消費者庁、こども家庭庁)、デジタル庁、総務省、法務省、財務省(国税庁)、文部科学省、厚生労働省、農林水産省(林野庁)、経済産業省(中小企業庁)、国土交通省、環境省といった官公庁の公開情報など、信頼性の高い情報をもとに厚生労働省管轄の公的年金(厚生年金保険と国民年金)、年金制度の仕組み、社会保障、退職金、資産運用や貯蓄、NISA、iDeCoなどをテーマに企画・編集・執筆を行う。(2024年8月22日更新)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役、株式会社モニクルフィナンシャル取締役も務める。東京工業大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2024年8月27日