6. 支給開始年齢による増額
年金の受給額が決定される要素として、支給開始年齢も重要となります。
現在の日本では、原則として65歳から老齢年金の受給が開始されます。しかし、その年齢を75歳まで繰り下げることが可能で、1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額されます。
つまり、75歳まで繰り下げた場合には84%増額されることになります。
6.1 増額のシミュレーション
例えば81万6000円の老齢基礎年金を75歳まで繰下げした場合、81万6000円×1.84=150万1440円が年額で受け取れることになります(月額12万5120円)
65歳から75歳まで支給を繰り下げてから月額30万円を受け取りたい場合、〇〇円×1.84=360万円の式より、195万6522 円が必要であることになります。
そこから基礎年金額の81万6000円を差し引くと、必要な老齢厚生年金額は114万522 円です。
43年間の加入期間で考えると、先ほどと同様に「〇〇万円×(5.481/1000)×(43年間×12ヶ月)=114万522円」から逆算して、およそ40万3268円の平均標準報酬月額が必要であることになります。
43年間の加入期間の、賞与も含めた平均標準報酬月額を40万円ほどにすると考えると、先ほどよりは現実的になったのではないでしょうか。
7. おわりに
ひと月30万円以上の厚生年金を受給するためには、長期間の加入と高い平均標準報酬月額が必要であり、現在その水準の年金額を受け取っている人はごくわずかです。
もし30万円以上の年金額を目指そうと考えた場合には、長期的な視点で早い段階からキャリアの計算を立てて収入を増やす努力が必要です。
老後の生活設計を考える上で、年金は重要な要素の一つですが、それだけに頼るのではなく、個人年金や資産運用など、多様な方法で将来に備えることも考えてみましょう。
自身の現状の収入や将来設計から、どの程度の年金額が受け取れるのかを考え、それに不足する部分を年金以外の運用などで作っていくことを考えることも大切です。
参考資料
- e-Stat「2024年3月 厚生年金保険・国民年金事業月報(速報)」
- 厚生労働省「いっしょに検証!公的年金〜年金の仕組みと将来〜 第04話 日本の公的年金は2階建て」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
斎藤 彩菜