8. 【2023年4月開始】繰下げみなし増額制度を知っておこう

2023年4月からスタートした繰下げみなし増額制度を使えば、繰下げ待機期間も安心して過ごせます。

繰下げみなし増額制度は、70歳以降に年金の繰下げ申出をせず、本来の年金を受け取ることを選択した場合、請求の5年前に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金5年分を一括で受け取れる制度です。

【年金の繰下げ請求】さかのぼって本来の年金を受け取 ることを選択する場合

【年金の繰下げ請求】さかのぼって本来の年金を受け取 ることを選択する場合

出所:日本年金機構「老齢年金の繰下げ制度」

年金請求の権利は、5年で時効を迎えて消滅してしまいます。現在、年金の繰下げは75歳まで可能です。

しかし、仮に75歳まで繰り下げた場合、70〜75歳までの5年間分しか年金を受け取れません。本来支給されるはずだった65〜69歳までの年金は、請求権がないため受け取れないのです。

そこで、5年分の年金を繰下げ申出があったものとして増額することで、時効により受け取る年金額が減らないように制度改正が行われました。繰下げみなし増額制度により、不安なく繰下げができるようになりました。

ただし、一括で5年分の年金を受け取るため、受け取った年は一時的に収入が大きく増えます。税金や社会保険料の負担額が上がってしまう可能性がある点には、注意が必要です。

9. まとめにかえて

年金の受給繰下げは、年金額が増やせる一方、一部の年金が支給停止されたり、優遇措置が受けられなかったりします。

また、待機期間中に亡くなってしまうと、どれだけ年金額が増えていても一切受け取れません。

年金には「寿命」という予期できないリスクが生じます。繰下げみなし増額制度を活用したり年金を適切なタイミングで受給したりできるよう、あらかじめ「受給プラン」を考えておくとよいでしょう。

参考資料

石上 ユウキ