2024年5月22日、株式会社マイナビは第5回となる「ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2024年)」の結果を公表しました。

結果からは、アルバイト就業中であるミドルシニアやシニアのお金事情が浮き彫りになっています。

中でも、経済的にゆとりがない割合はシニア層(60歳代・70歳代)のうち48.2%にのぼることから、老後生活に不安を抱える方も多いとうかがえます。

そこで気になるのが、シニアの実際の貯蓄額について。実は、定年退職者も含まれる「60歳代」において、貯蓄100万円未満という世帯も少なくないのです。

世帯人数によっても貯蓄額は変動するため、今回は「単身世帯」に絞ってデータを見ていきましょう。

1. アルバイト就業中の「シニア」経済的にゆとりがない割合は?

株式会社マイナビは、現在アルバイト就業中、またはアルバイト就業を希望する非就業の40歳代~70歳代を対象とした「ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2024年)」の結果を公表しました。

結果によると、「経済的にゆとりがない」と回答した割合は58.6%となり、そのうちシニア層(60歳代~70歳代)では48.2%にのぼりました。

  • ミドルシニア・シニア層全体:58.6%
  • ミドルシニア:66.2%
  • シニア:48.2%

なお、理想の年収と実際の年収にも乖離が見られています。

  • 男性60歳代:理想は154万8000円、実際は129万1000円
  • 男性70歳代:理想は113万円、実際は94万8000円
  • 女性60歳代:理想は114万1000円、実際は98万9000円
  • 女性70歳代:理想は90万7000円、実際は82万7000円

特に男性において、ギャップが大きいことがわかります。

では、今の60歳代のうち単身世帯では、どれほど貯蓄があるものなのでしょうか。実は、100万円未満という方も少なくないことがわかっています。

2. 【60歳代の単身世帯】貯蓄100万円未満の割合は少なくない

60歳代単身世帯の貯蓄額について、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」より確認します(金融資産を保有していない世帯を含む)。

60歳代・単身世帯の貯蓄円グラフ3/5

60歳代・ひとり以上世帯の貯蓄円グラフ

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

2.1 【60歳代単身世帯】の貯蓄100万円未満の割合

  • 41.8%

2.2 【60歳代単身世帯】の貯蓄ゼロの割合

  • 33.3%

2.3 【60歳代単身世帯の貯蓄額】平均と中央値

  • 平均:1468万円
  • 中央値:210万円

貯蓄の平均額が1468万円と聞くと多い印象がありますが、実態では100万円未満が41.8%。また、貯蓄ゼロは33.3%にのぼります。

同資料において、金融資産とは「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分とする。…(中略)…日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く」と定義されています。

つまり、日常的に使用する銀行口座の残高は含まれていないため、「貯蓄ゼロ」とは言っても全く貯金がないというわかではないでしょう。

しかし、将来に備えた蓄えがゼロという世帯が3割以上という現実からは、やはり経済的な課題を抱える世帯もいると考えられます。

一方で、貯蓄3000万円以上でみると15.1%となりました。このように十分な貯蓄を備えている世帯も多いと考えられるため、次は「貯蓄の保有世帯のみ」に限定して平均額や中央値を見てみましょう。

3. 【60歳代単身世帯】貯蓄保有世帯のみの平均と中央値はいくらになる?

同調査より、貯蓄保有世帯のみの貯蓄額について見ていきましょう。

60歳代単身世帯の貯蓄円グラフ4/5

60歳代・ひとり以上世帯の貯蓄円グラフ

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

3.1 【60歳代単身世帯】の貯蓄100万円未満の割合

  • 12.8%

3.2 【60歳代単身世帯】の貯蓄3000万円以上の割合

  • 22.7%

3.3 【60歳代単身世帯の貯蓄額】平均と中央値

  • 平均:2240万円
  • 中央値:1100万円

貯蓄保有世帯のみの貯蓄額をみると、貯蓄100万円未満は12.8%まで減りました。平均は2000万円を超え、中央値は1000万円を超えています。

なお、貯蓄3000万円以上の割合も22.7%まで増えました。

貯蓄がある世帯・ない世帯の二極化はどの世代でも見られる傾向です。

経済的な理由から、60歳代でも働き続ける方は多いです。では、手取り収入からどれほど貯蓄に回しているのでしょうか。

次章にて「手取り収入からの貯蓄割合」について確認していきます。

4. 【60歳代単身世帯】みんなは手取り収入から貯蓄に回せている?

シニアが働く理由はさまざまですが、経済的な理由を主とする方は多いです。この場合、貯蓄に回せる余裕があるのか気になりますね。

60歳代が「手取り収入から貯蓄に回す」割合を確認しましょう。

60歳代・単身世帯の手取りからの貯蓄割合5/5

60歳代・ひとり以上世帯の手取りからの貯蓄割合

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

4.1 年間手取り収入からの貯蓄割合

  • 平均:10%
  • 5%未満:6%
  • 5〜10%未満:9.2%
  • 10〜15%未満:11.7%
  • 15〜20%未満:2.5%
  • 20〜25%未満:10.6%
  • 25〜30%未満:1.4%
  • 30〜35%未満:2.1%
  • 35%以上:7.1%
  • 貯蓄しなかった:49.3%

貯蓄しなかったと回答した世帯が49.3%と、ほぼ半数を占めています。

貯蓄に回す世帯の中でも最も多いのは「10〜15%未満」で、平均は10%でした。

例えば手取り月収が10万円の場合、平均通りであれば1万円。ボリュームゾーン通りであれば、1万円~1万5000円程度を貯蓄に回すということです。

冒頭の株式会社マイナビの調査によると、シニア層のうち定年退職前より年収が減少した割合は89.1%でした。

半分以下に減少した割合は60.4%です。シニアになれば生活費は抑えられるかもしれませんが、収入減の幅と一致するかどうかは世帯によって異なります。

現役時代と同じ貯蓄割合を想定していると、収入源に伴って苦しくなることも十分考えられるでしょう。老後に向けた資産形成は検討されることも多いですが、同時に「生活費のダウンサイジング」等もとても重要になるのです。

5. 定年後に増える出費もある?減る出費と一緒に確認

定年退職後は生活費が減ると考える方も多いですが、意識しないとなかなか減らせません。

事前に減る出費・増える出費を押さえておきましょう。

公益社団法人生命保険文化センターは、定年後に「増える支出」と「減る支出」について下記のとおりまとめています。

5.1 定年後に増える出費の例

  • 近所づきあいの交際費
  • 趣味や生きがいのための費用
  • 妻の国民年金保険料(妻が60歳になるまで)
  • 国民健康保険料※
     

5.2 定年後に減る出費の例

  • 住宅ローン(完済する場合)
  • 会社員としての交際費・食費
  • スーツ、ワイシャツ、ネクタイなどビジネス被服代
  • 子供の教育・扶養費用(成人・独立の場合)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 健康保険料※

あくまでも一例ですが、セカンドライフのスタートともに増える出費があることがわかります。

※記事内では単身世帯の貯蓄額を紹介しましたが、もし配偶者や子どもがいる場合、健康保険は扶養に入れる可能性もあります。この場合、国民健康保険料は負担する必要がないでしょう。

賃貸住まいの場合、住宅ローンの完済がないので今後も住宅費がかかりつづけます。ライフプランによっては、老人ホームへの入居費用等も視野に入れることがあるでしょう。

上記を例として、「私の場合」でシミュレーションを行うことが重要になります。もちろん、定期的な収入源となる公的年金の見込額も、定年退職前にかならず確認しておきましょう。

6. まとめにかえて

60歳代単身世帯の「貯蓄100万円未満の割合」と平均・中央値を確認してきました。

経済的なゆとりがないと感じる世帯も多い中、現役時代から計画的に準備を進めることが重要であるといえます。

何も準備を始めていないという方は、まずは年金見込み額を知り、定年退職後に増える出費・減る出費を考えながらシミュレーションしてみましょう。

不足する分を確実に貯蓄を貯めていくには、毎月の給料や収入から一定額を先に貯蓄し、残りのお金で生活していく「先取り貯金」が効果的です。

預貯金だけでなく、2024年にスタートした新NISAで積立を行うのもひとつですね。

これを機に、それぞれの世帯に合った貯蓄方法について考えてみてはいかがでしょうか。

6.1 【ご参考】60歳代単身世帯の貯蓄額一覧表(金融資産を保有していない世帯を含む)

  • 金融資産非保有:33.3%
  • 100万円未満:8.5%
  • 100~200万円未満:4.7%
  • 200~300万円未満:2.8%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.4%
  • 500~700万円未満:3.5%
  • 700~1000万円未満:2.8%
  • 1000~1500万円未満:6.6%
  • 1500~2000万円未満:4.5%
  • 2000~3000万円未満:8.0%
  • 3000万円以上:15.1%
  • 平均:1468万円
  • 中央値:210万円

参考資料

太田 彩子