3. 60歳代で貯蓄2000万円あれば安心なのか

年金の平均月額をみてきましたが、総務省「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」によれば、65歳以上で夫婦の月の生活費は26万8508円、ひとり世帯では15万5495円です。

ただし、こちらは持ち家を想定しているため、賃貸であればさらに家賃がかかります。

また、昨今のような物価高をみていると、たとえば老後を65~90歳の25年間と考えても、世界情勢の影響によりいつ物価高が訪れるかは予測ができず、「できるだけ多く貯蓄を保有したい」ところでしょう。

年金についても、毎年度見直しが行われます。

2023年度は年金額が引き上げられました。67歳以下の新規裁定者で2.2%、68歳以上の既裁定者で1.9%の増額です。

2023年度の国民年金と厚生年金の年金額例を見てみましょう。

  • 国民年金(満額):6万6250円(新規裁定者。68歳以上の方は6万6050円)(前年度比+1434円)
  • 厚生年金は標準夫婦(2人分の国民年金と厚生年金):22万4482 円(前年度比+4889円)

厚生年金は、老齢厚生年金部分が年収や年金加入期間によって決定する仕組み上、個人差があるため、モデルケースの年金額例となっています。

モデルケースは「平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準」です。

同様の世帯の年金額の参考として見ておきましょう。

実際には個人差が大きいですし、少子高齢化の現代においては、今後は年金受給額が下がる可能性も考えられます。

このように世界情勢や社会情勢による影響があるため、今後はさらに必要になる可能性も考えられます。

また、「老後2000万円問題」は生活費の不足分の試算ですから、旅行やレジャー、趣味、リフォーム、病気や介護にまつわる費用などを考えると、他に用意する必要がある場合もあります。

実際には家庭差がありますから、数字には踊らされずご家庭に合った必要資金を考えることが大切でしょう。