3.【老齢年金】プラス改定でも実質的には目減りとの見方
2023年4月分からの厚生年金・国民年金の受給額は増額となりますが、さまざまな食品や日用品などの値上がりが続いており、値上がり分をカバーできるほどの増額ではないというのが現状です。
そのため、実質的な年金額は目減りしているとの見方もあります。
年金受給額の決定においては、賃金や物価の改定率を調整して年金給付水準を調整する「マクロ経済スライド」という仕組みが取られています。
マクロ経済スライドは将来の年金水準を確保するために必要な仕組みで、2023年度は「▲0.3%」の調整が行われます。
マクロ経済スライドは賃金や物価がマイナスとなる年度には適用されず、翌年度以降に持ち越されるというルールがあります。
2021年度と2022年度はマクロ経済スライドが適用されず、2年度分で「▲0.3%」が持ち越されています 。
今年度は、過去2年度分の持ち越し分の「▲0.3%」も調整に追加され、合計で「▲0.6%」の調整が行われることになりました。
その結果、新規裁定者と既裁定者は以下のように年金水準が抑制されます。
- 新規裁定者:名目手取り賃金変動率「2.8%」-マクロ経済スライド「0.6%」=2.2%
- 既裁定者 :物価変動率「2.5%」-マクロ経済スライド「0.6%」=1.9%
このように、賃金変動率や物価変動率にマクロ経済スライドによる調整が行われることで、年金額が増額されたとはいえ、実質的には目減りしていると考えられているのです。