2023年4月14日(金)は年金支給日です。4月分からは新年度の年金額となり、2023年度の年金額は3年ぶりの増額改定となりました。
しかし、14日に入金された年金額は2月支給分と変わらず、「間違いではないか」と思った人もいるかもしれません。
実は年金の支給は「後払い」のような仕組みで、各支給月には前月までの2カ月分の年金が支払われるのです。
今回は年金支給日の基本と、増額されたはずの年金の実質的な目減りなどについて解説します。
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1. 2023年度の「厚生年金と国民年金」は2022年度からの増額改定
2023年4月からの年金月額(老齢基礎年金の満額)は67歳以下の人で6万6250円、68歳以上の人は6万6050円です。
それぞれ2022年度から2.2%、1.9%の引き上げとなります。
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出所:日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
1.1 2023年度の年金額が支給されるのは6月から
年金の支給日は原則として偶数月の15日で、15日が土日・祝日のときは、その直前の平日となります。2023年4月であれば15日は土曜日のため、14日の金曜日が支給日となるわけです。
年金の各支払月には、その前月までの2カ月分の年金が支払われます。2023年2月に支払われるのは2022年12月と2023年の1月分、4月であれば2月分と3月分です。
2023年度の年金額は4月分からが対象であり、4月分が支払われるのは6月15日(木)です。
2. 年金額は増額されても実質的には減少の理由
2023年度の年金の増額改定は、総務省「2022年(令和4年)平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)を受けて決定しました。
2022年の全国消費者物価指数の総合指数は前年比2.5%の上昇となっており、物価上昇を織り込んだ増額となったわけです。
しかし、物価上昇率2.5%に対し、年金の引き上げ率は2.2%、1.9%に抑えられています。
これは、現在の年金の給付水準はマクロ経済スライドという仕組みで、物価上昇をそのまま年金額には反映させないからです。増額された年金額が物価の上昇には追いついていなければ、実質的に手元に残るお金は減ります。
つまり、増額といっても手放しでは喜べない状況というわけです。
2.1 2022年後半は急激な物価上昇に
日本は近年デフレ傾向が続いていましたが、2022年に入ってから物価が上がり始め、後半からは急激な上昇に見舞われました。
以下の表は、2022年と2023年の消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)の推移です。2022年12月は前年比4.0%と1981年12月以来41年ぶりの高水準となりました。
【2022年】消費者物価指数の推移2/4
出所:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)2月分」より筆者作成
【2023年】消費者物価指数の推移3/4
出所:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)2月分」より筆者作成
2022年平均で物価上昇の特に著しい品目は以下のとおりです。
- 生鮮魚介:13.8%
- 電気代:20.0%
- ガス代:18.6%
- 灯油:20.2%
食料品や水道光熱費など、年金生活者にも大きな影響のある品目の値上がり幅が大きいことがわかります。
今後もこのような勢いで物価が上がり続けるとはかぎりません。しかし、年金が物価上昇に追いつかなければ、老後の生活が圧迫されることを理解しておきましょう。
3. 年金額の目減り対策2つ
年金が増額されても実質的に目減りすることへの対策は、早くから考えておく必要があります。
3.1 対策1.年金を繰り下げ受給して受取額を増やす
年金額を増やす方法として考えられるのが、年金の繰り下げ受給です。年金の受給開始の基本は65歳からですが、75歳までの間で選べます。
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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
年金を繰り下げると年金額は増額され、増額された年金を一生涯受け取れます。
受給開始を1カ月遅らせるごとに0.7%ずつの割り増しになるのです。70歳まで遅らせると42%増、75歳までで84%もの増額となります。
たとえば、65歳からの年金月額が15万円の人が70歳から受け取ると21万3000円、75歳からの受け取りなら27万6000円になります。
繰り下げは長生きリスク対策として有効ではあります。しかし、受給開始からわずかのうちに亡くなってしまうと、65歳から受け取る場合に比べて受け取れる年金の総額が少なくなります。
そのため、いつから受け取るかについて、自分の健康や貯蓄状況を考慮した慎重な検討が必要です。
3.2 対策2.年金を繰り下げる場合は、できるだけ長く働く
年金を繰り下げる場合、受給開始までの収入確保のために働く人も多いでしょう。「高年齢者雇用安定法」により、正社員でなくても65歳までの雇用確保が義務づけられ、70歳までの就業機会の確保が努力義務になりました。
希望すれば60歳以降も働いた収入で生活していくことも可能でしょう。
定年後に厚生年金に加入して働くと、期間や給与に応じて厚生年金の金額が増やせます。たとえば、年間給与250万円で5年働くと年金月額は5100円(年間6万1200円)増額され、繰り下げた年金額にも反映されます。
4. 老後資金は物価上昇について考えておきましょう
日本の公的年金は年金財政を健全に維持するため、マクロ経済スライドで物価上昇ほどには年金額を増やさないことになっています。
現在のような急激な物価上昇が続くと、否応なしに家計はダメージを受けます。年金生活者になってからでは対策を立てるのも難しいでしょう。
現役のうちから物価上昇による資産価値の目減りを意識し、対策を考える必要があります。
中でも何歳まで働くかはライフプランの重要な要素なので、早めに計画を立てるようにしましょう。
参考資料
- 日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「マクロ経済スライド」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)2月分」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年12月分及び2022年平均」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 厚生労働省「厚生年金ガイドブック 従業員向け」
松田 聡子
