2. 年金額は増額されても実質的には減少の理由
2023年度の年金の増額改定は、総務省「2022年(令和4年)平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)を受けて決定しました。
2022年の全国消費者物価指数の総合指数は前年比2.5%の上昇となっており、物価上昇を織り込んだ増額となったわけです。
しかし、物価上昇率2.5%に対し、年金の引き上げ率は2.2%、1.9%に抑えられています。
これは、現在の年金の給付水準はマクロ経済スライドという仕組みで、物価上昇をそのまま年金額には反映させないからです。増額された年金額が物価の上昇には追いついていなければ、実質的に手元に残るお金は減ります。
つまり、増額といっても手放しでは喜べない状況というわけです。
2.1 2022年後半は急激な物価上昇に
日本は近年デフレ傾向が続いていましたが、2022年に入ってから物価が上がり始め、後半からは急激な上昇に見舞われました。
以下の表は、2022年と2023年の消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)の推移です。2022年12月は前年比4.0%と1981年12月以来41年ぶりの高水準となりました。
2022年平均で物価上昇の特に著しい品目は以下のとおりです。
- 生鮮魚介:13.8%
- 電気代:20.0%
- ガス代:18.6%
- 灯油:20.2%
食料品や水道光熱費など、年金生活者にも大きな影響のある品目の値上がり幅が大きいことがわかります。
今後もこのような勢いで物価が上がり続けるとはかぎりません。しかし、年金が物価上昇に追いつかなければ、老後の生活が圧迫されることを理解しておきましょう。