岸田首相が「異次元の少子化対策に挑戦する」と述べてから、「子育て支援」に関する政策のニュースを目にする機会が増えました。

2月10日の閣議でも「出産育児一時金」の増額に向け、その財源を75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度からも捻出する改正案が決定されたばかり。

少子化対策のための支援が手厚くなることは、もちろん喜ばしい話です。とはいえ、年金収入だけで暮らすシニア世帯からは、さらなる負担を不安に感じる声も聞こえてきそうですね。

現役世代が受け取る給与と同様に、老後の年金からも税金や社会保険料が天引きされています。実は、既に「額面と手取り」のギャップを感じている人も多いのです。

今回は、いまのシニア世代が受けとる厚生年金の受給額事情をながめたあと、「年金から天引きされる税金や社会保険料」を整理します。また、モデルケースを参考に、天引きされる金額がどの程度になるかも見ていきます。

【注目記事】「老後に2000万円必要」はウソ?【役所は教えない】年金だけで暮らしていく方法とは

1. 【最新版】厚生年金の受給額「平均と分布」を見る

老後の年金、皆さんはひと月どのくらい受給できると思いますか?今回は、いまのシニア世代が受け取る厚生年金の月額データを見てみましょう。

1.1 厚生年金の平均は「約14万3000円」

厚生労働省が2022年12月に公表した「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、サラリーマンとして働いてきた人が受けとる厚生年金の平均年金月額は以下の通りです。

厚生年金保険(第1号)平均月額(※国民年金月額を含む)

男女全体:14万3965 円

  • 男性:16万3380円
  • 女性:10万4686円

ただしこれらの金額はあくまでも「平均額」。厚生年金は現役時代の収入に応じて納める年金保険料が異なります。

高収入の人ほど保険料も高く(※ただし上限あり)、将来受け取れる年金額も多くなるしくみです。よって、実際の受給額には大きな個人差があります。男女全体・男女別のグラフをそれぞれ見ていきましょう。

1.2 グラフで見る【男女全体】厚生年金の受給額

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出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 1万円未満:9万9642人
  • 1万円以上~2万円未満:2万1099人
  • 2万円以上~3万円未満:5万6394人
  • 3万円以上~4万円未満:10万364人
  • 4万円以上~5万円未満:11万1076人
  • 5万円以上~6万円未満:16万3877人
  • 6万円以上~7万円未満:41万6310人
  • 7万円以上~8万円未満:70万7600人
  • 8万円以上~9万円未満:93万7890人
  • 9万円以上~10万円未満:113万5527人
  • 10万円以上~11万円未満:113万5983人
  • 11万円以上~12万円未満:103万7483人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5237人
  • 13万円以上~14万円未満:91万8753人
  • 14万円以上~15万円未満:93万9100人
  • 15万円以上~16万円未満:97万1605人
  • 16万円以上~17万円未満:101万5909人
  • 17万円以上~18万円未満:104万2396人
  • 18万円以上~19万円未満:100万5506人
  • 19万円以上~20万円未満:91万7100人
  • 20万円以上~21万円未満:77万5394人
  • 21万円以上~22万円未満:59万3908人
  • 22万円以上~23万円未満:40万9231人
  • 23万円以上~24万円未満:27万4250人
  • 24万円以上~25万円未満:18万1775人
  • 25万円以上~26万円未満:11万4222人
  • 26万円以上~27万円未満:6万8976人
  • 27万円以上~28万円未満:3万9784人
  • 28万円以上~29万円未満:1万9866人
  • 29万円以上~30万円未満:9372人
  • 30万円以上~:1万4816人

1.3 グラフで見る【男女別】厚生年金の受給額

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出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

■男性■

  • ~1万円未満 7万366人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4136人
  • 2万円以上~3万円未満:5875人
  • 3万円以上~4万円未満:1万580人
  • 4万円以上~5万円未満:3万1646人
  • 5万円以上~6万円未満:7万694人
  • 6万円以上~7万円未満:17万8892人
  • 7万円以上~8万円未満:26万5042人
  • 8万円以上~9万円未満:25万7224人
  • 9万円以上~10万円未満:28万4196人
  • 10万円以上~11万円未満:35万8936人
  • 11万円以上~12万円未満:44万6960人
  • 12万円以上~13万円未満:52万9551人
  • 13万円以上~14万円未満:62万4724人
  • 14万円以上~15万円未満:72万5289人
  • 15万円以上~16万円未満:81万5769人
  • 16万円以上~17万円未満:90万3637人
  • 17万円以上~18万円未満:96万5471人
  • 18万円以上~19万円未満:95万3315人
  • 19万円以上~20万円未満:88万9人
  • 20万円以上~21万円未満:75万1043人
  • 21万円以上~22万円未満:57万7586人
  • 22万円以上~23万円未満:39万8787人
  • 23万円以上~24万円未満:26万7701人
  • 24万円以上~25万円未満:17万8056人
  • 25万円以上~26万円未満:11万2141人
  • 26万円以上~27万円未満:6万7929人
  • 27万円以上~28万円未満:3万9296人
  • 28万円以上~29万円未満:1万9670人
  • 29万円以上~30万円未満:9237人
  • 30万円以上~:1万4455人

■女性■

  • ~1万円未満 2万9276人
  • 1万円以上~2万円未満:6963人
  • 2万円以上~3万円未満:5万519人
  • 3万円以上~4万円未満:8万9784人
  • 4万円以上~5万円未満:7万9430人
  • 5万円以上~6万円未満:9万3183人
  • 6万円以上~7万円未満:23万7418人
  • 7万円以上~8万円未満:44万2558人
  • 8万円以上~9万円未満:68万666人
  • 9万円以上~10万円未満:85万1331人
  • 10万円以上~11万円未満:77万7047人
  • 11万円以上~12万円未満:59万523人
  • 12万円以上~13万円未満:41万5686人
  • 13万円以上~14万円未満:29万4029人
  • 14万円以上~15万円未満:21万3811人
  • 15万円以上~16万円未満:15万5836人
  • 16万円以上~17万円未満:11万2272人
  • 17万円以上~18万円未満:7万6925人
  • 18万円以上~19万円未満:5万2191人
  • 19万円以上~20万円未満:3万7091人
  • 20万円以上~21万円未満:2万4351人
  • 21万円以上~22万円未満:1万6322人
  • 22万円以上~23万円未満:1万444人
  • 23万円以上~24万円未満:6549人
  • 24万円以上~25万円未満:3719人
  • 25万円以上~26万円未満:2081人
  • 26万円以上~27万円未満:1047人
  • 27万円以上~28万円未満:488人
  • 28万円以上~29万円未満:196人
  • 29万円以上~30万円未満:135人
  • 30万円以上~:361人

ごらんの通り、個人差・男女差が非常に大きいことがわかります。平均額はあくまでも参考程度として知っておくとよいでしょう。

ご自身の年金見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で把握し、リタイヤ後のマネープランを立てていく必要がありますね。

ちなみに先日、厚生労働省は、2023年度の公的年金額の引き上げを公表しました。

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出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」

出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」

前年度よりが前年度より引き上げられることが公表されました。前年度からの引き上げ幅は新規裁定者(67 歳以下)は2.2%、既裁定者(68 歳以上)は前 1.9%。

とはいえ、しかし、長期的に見ると厚生年金の受給額は減少傾向にあります。

少子高齢化が進み年金制度の支え手は減少しています。また昨今の物価上昇などを考えたとき、将来の年金に漠然とした不安を覚える現役世代も多いでしょう。

しかし、年金についてはもう一つ「不安要素」があります。それは、天引きされる税金や社会保険料の存在です。次で詳しく見ていきましょう。

2. 【厚生年金】ひと月15万円の額面も「手取りはここまで下がる!」

冒頭で、老後の年金からも税金や社会保険料が天引きされることに触れました。天引きされる税金や社会保険料は、所得や居住地によって異なる場合があります。

今回は、東京都八王子市に住む女性(76歳)の例を参考にして見ていきましょう。以下は年金から天引きされるものの一覧です。

2.1 年金からの天引き①税金

厚生年金が月額15万円の場合、年間収入は180万円。年金しか収入がない場合、年間で所得税として1万1231円、住民税として3万2000円が天引きされます。

2.2 年金からの天引き②介護保険料

年金年額が18万円以上の場合、介護保険料は年金から天引きされます。八王子市の場合、年金収入が180万円の方は年額7万9400円の介護保険料となります。

2.3 年金からの天引き③健康保険料

年金から天引きされる健康保険料は、「国民健康保険」か「後期高齢者医療制度」のどちらに属するかで変わります。

今回の女性は76歳なので、後期高齢者医療制度に加入します。こちらの保険料を東京都後期高齢者医療広域連合の所得割率と均等割額を用いて計算すると、保険料は年間約6万7278円となります。

これらを合計すると年金から天引きされる税金や社会保険料は年間で約19万円になります。

仮に、年金額が月15万円で年間収入が180万円だった場合、これら税金や社会保険料の金額19万円を差し引くと、手取りは年間で161万円。月に換算すれば、約13万円ですね。

3. 老後は年金だけで暮らしていける?

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」によると、65歳以上の単身無職世帯の1カ月の消費支出は13万2476円です。

※消費支出…食費や住居費など、原則として日常の生活を営むのに必要な商品やサービスを購入し支払った支出のこと

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出所:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」

出所:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」

男女全体の平均月額(約14万3000円)を受け取っている場合でも「年金だけで無理なく暮らす」ことは難しい可能性が高そうです。

さらにいうと、いまの年金水準がこの先もずっと維持されるとは限りません。私たち現役世代は、年金生活を支える「老後資金」をしっかり準備していく必要があるでしょう。

4. まとめにかえて

最新の厚生年金受給額事情をながめたあと、年金から天引きされる税金や社会保険料について整理しました。

公的年金のいわゆる「額面」については、メディア報道、そして「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で何かと見聞きしますね。

一方、年金から天引きされるお金についてこれまで意識する機会がなかった、という人も多いでしょう。例えば「繰下げ受給」で年金を増やした結果、税金や社会保険料の負担が増え、手取りが減ってしまうようなケースも起こり得ます。

年金や税金、社会保険料との付き合いは、生涯続きます。それらのしくみを理解することは、「人生100年時代」を見据えたお金の準備を上手に進めていく一つのポイントとなるかもしれません。

参考資料

鶴田 綾