2022年には高校でも金融教育が始まりました。今後は家計管理や資産運用について、オープンに話す社会となっていくでしょう。
一方、親世代では身近な「お金」について実は知らないということもあるのではないでしょうか。
「老後2000万円問題」が話題になりましたが、実は老後に2000万円が必要と言い切れないのが現実です。
さらに「年金だけで暮らす」というのはかなりハードルが高くなりつつあるのです。
今回は身近なようであまり知らない「老後のお金」にフォーカスをあて、紐解いていきます。
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1. 「老後2000万円問題」とは何だったのか
老後2000万円問題の発端となったのは、金融庁の金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容です。
本資料で用いられたのは、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均的な1ヵ月の収支でした。
- 実収入(主に年金):20万9198円
- 実支出(主に食費):26万3718円
- 月々の赤字額=約5万5000円
老後必要額=5万5000円×12カ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円 ※約2000万円
これが「年金以外に老後では2000万円が必要になる」という根拠です。しかし、ここには落とし穴があります。
- 介護費用が含まれていない
- 住居費は1万3656円で計算されている
- 収入と支出はひとそれぞれ
試算根拠とされているのは、あくまでも平均的な収支です。また今の高齢者は持ち家が多いですが、今後はずっと賃貸住まいという方が増えるでしょう。
そうなると、支出には家賃分の上乗せが必要となります。
平均寿命が長くなるにつれ、長生きリスクも見過ごせません。介護費用や医療費用は今後高まると考えておいた方がいいでしょう。
つまり、今の現役世代が老後を迎える頃には、2000万円では足りなくなることは十分に考えられるのです。
2. 厚生年金・国民年金はいくらなのか
将来受給できるのが公的年金です。日本の公的年金には「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」があります。
それぞれの受給額を見ていきましょう。
2.1 厚生年金(第1号)の受給額の月平均
- 〈全体〉平均年金月額:14万4366円
- 〈男性〉平均年金月額:16万4742円
- 〈女性〉平均年金月額:10万3808円
※国民年金の金額を含む
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出所:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
2.2 国民年金の受給額の月平均
- 〈全体〉平均年金月額:5万6252円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9040円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4112円
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出所:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
自営業や専業主婦などは国民年金のみの加入なので、月々の収入は5万円台になる見込みです。
一方、公務員や会社員は厚生年金にも加入するため、平均は14万円台です。しかし男女差からわかるように、個人で受給額は大きく変わります。
これは、厚生年金が「現役時代の収入」や「加入期間」によって決定されることに起因します。
3. 厚生年金・国民年金だけで暮らすためには
将来、年金だけで暮らすためには何ができるのでしょうか。まずは年金をアップする方法を考えてみましょう。
3.1 厚生年金の受給額をあげる
厚生年金の受給額は、加入期間と報酬額で決まります。加入期間が長いほど有利になるため、厚生年金制度を導入している企業に属する期間を延ばすというのが選択肢になります。
例えば独立と転職を迷う場合、厚生年金の観点で見ると転職の方がいいと言えます。もちろんその他の要素を複合的に考える必要があるため、年金だけで決めるのはNGではありますが、こうした視点を持っておいて損はないでしょう。
また厚生年金は70歳まで加入することもできます。できるだけ長く働くことで、将来の年金額を上げることが可能になります。
3.2 国民年金の受給額をあげる
国民年金は、保険料の納付月数によって受給額が決まります。もし過去に未納分がある場合、できれば追納しておきましょう。学生の間に猶予を受けていた方も、一定の期間内であれば追納できます。
追納できる期間はねんきんネットでも確認することができます。
また自営業者で国民年金しか無い方は、国民年金基金や付加保険料の納付を検討してみましょう。どちらも年金額に上乗せできる制度なので、無理のない範囲で選ぶといいでしょう。
3.3 繰下げ受給という選択肢も
厚生年金も国民年金も、65歳より後に受給開始とすることで、受給額を増額させることができます。これを年金の繰下げ受給といいます。
2022年4月からは75歳まで繰り下げることが可能になりました。1ヵ月繰り下げるごとに0.7%増えるので、最大10年で84%も増やせる計算になります。
ただし、年金受給までは収入がないので働き続けることが必要です。万が一働けなくなった場合のリスクにもしっかり備えておきましょう。
4. 無駄な出費を減らし余裕ある老後生活を
老後2000万円問題について解説しました。今の高齢者であっても「全員に2000万円必要だ」というわけではなく、さらに今の現役世代にはもっとあてはまらない試算だと言えます。
数字だけが独り歩きしていますが、個々で老後のシミュレーションをすることが重要です。
現在受給されている年金額では、老後を暮らすことが難しいと感じた方も多いと思います。年金だけで暮らすというのは、意外に難しいものです。
ご紹介した年金アップ術に加え、生活費のダウンサイズも必須でしょう。
余裕のある老後を迎えたい場合、やはり貯蓄という備えは心強くなります。今からコツコツ準備を始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
太田 彩子