住宅ローンの繰り上げ返済とは、返済計画より早く一部、または全部の債務を返済することです。
住宅ローンの返済額は、元金+利息。早く返済することでその分の利息が少なくなるため、繰り上げ返済によって総返済額は少なくなります。
しかし、手元資金ができたらできた分だけ繰り上げ返済するのはおすすめしません。
本記事では、住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない4つのケースとその理由について解説します。
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない理由1.住宅ローン減税
住宅ローン控除とは、新築住宅は13年間、中古住宅は10年間にわたって、年末の住宅ローン残高の0.7%を上限に所得税と一部住民税が控除される制度です。
「年末の住宅ローン残高」によって控除額が変わるため、繰り上げ返済によって残高が減れば、その分、損してしまうとも考えられます。
また、期間短縮型の繰り上げ返済をしたことにより借入期間が10年未満となった場合、それ以降、住宅ローン控除が受けられなくなってしまいます。
住宅ローン控除を受けている間に繰り上げ返済しても良いケース
住宅ローン控除を受けている間に繰り上げ返済することで、必ずしも損するとは限りません。
住宅ローン控除の控除額の上限は「年末の住宅ローン残高の0.7%」ではありますが、その金額よりも下記の金額が低ければ、実際に控除されるのは下記の金額です。
- 所得税+住民税(9.75万円が上限)
- 住宅性能や新築、中古などによって異なる最大控除額
次のような状況にあれば、住宅ローン控除を受けている間に繰り上げ返済したとしても、控除額が減ることはありません。
- 「住民税+所得税(9.75万円が上限)」が「繰上げ返済後の年末残高×0.7%」を下回る
- 「年間最大控除額」が「繰上げ返済後の年末残高×0.7%」を下回る
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない理由2.金利
現在、変動金利は0.4%ほど、固定金利は上昇傾向にあるものの1.5%前後で借り入れられます。
他のローンと比較すると、住宅ローンの金利水準は著しく低いものです。低金利なだけでなく、これほど長期間、高額な融資を受けられるローン商品は他にありません。
手元資金をどんどん繰り上げ返済に投入し、たとえばカーローンや教育資金の融資を受けるとすれば、逆に利息負担は重くなってしまいます。
住宅ローンの繰り上げ返済には、たしかに利息軽減効果がありますが、その他の借り入れがある、あるいは今後その予定がある場合には、住宅ローン以外のローンの借入金額を優先したほうが効果的です。
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない理由3.効果
場合によっては、住宅ローンの繰り上げ返済によって得られる効果より、繰り上げ返済する分を資産運用に回したほうが効果が大きいこともあります。
繰り上げ返済シミュレーション
- 当初借入元金:4000万円
- 投資借入期間:35年
- 返済済み期間:10年
- 返済方法:元利均等返済
- 借入金利:初回から1.5%
上記ケースで、500万円を繰り上げ返済した場合の効果は、次の通りです。
- 毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」:約200万円
- 返済期間を短くする「期間短縮型」:約100万円
毎月の返済額を変えずに返済期間を短くする「期間短縮型」で同額を繰り上げ返済した場合、減少する利息額は200万円以上、返済期間は5年ほど短縮できます。
一方、シミュレーション条件の金利を「0.5%」とした場合のそれぞれの利息減少額は、次の通りです。
- 毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」:約60万円
- 返済期間を短くする「期間短縮型」:約30万円
このように、繰上げ返済の方法や金利水準によって、効果は大きく異なることを認識しておきましょう。
資産運用のほうが効果が高いことも
一方で、500万円あれば、資産運用の選択肢は広がります。
年率3%で運用できれば、7年ほどで100万円増える計算です。レバレッジ効果を加えれば、さらに高利回りな資産運用方法も検討できるでしょう。
金利水準が低い今はとくに、繰上げ返済による効果は限定的です。
ただし、繰り上げ返済より資産運用を優先すべきとは断言できません。その理由は、住宅ローンの繰り上げ返済は、確実に利息負担を軽減できますが、どんな投資商品にも一定のリスクがあるからです。
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない理由4.団信
住宅ローンを組んでいる方の多くは、団体信用生命保険(団信)に加入しています。団信とは、債務者に万一のことがあったときに残債務の返済が免除される保険です。
団信は生命保険の1つではありますが、一般的な生命保険との違いは、残債が減るほど保険金額が減っていくということ。つまり、繰り上げ返済をすることによって、当初計画より早く団信の保険金額も減ってしまうのです。
団信は、その特徴から一般的な生命保険より保険料が割安であることもあります。繰り上げ返済後、あらたに生命保険に加入する場合は、その保険料と繰り上げ返済による効果を比較しましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済はタイミングを見極めて実施すべき
必ずしも、住宅ローンの繰り上げ返済をしてはいけないわけではありません。
繰り上げ返済の方法によっては、利息を減らすだけでなく、毎月の返済額を減らす効果にも期待できます。また金利が上昇しても、返済型軽減型の繰り上げ返済をすることで、月々の返済額を一定に保つこともできます。
- 金利上昇局面
- 余剰資金や金融資産が潤沢にある
- 住宅ローンが心理的負担になっている
このような状況にあれば、繰り上げ返済のメリットは大きいといえるでしょう。いずれにしても、住宅ローンの繰り上げ返済はタイミングを見極めて実施することが大切です。



