相次ぐ物価上昇に円安の影響、さらにはコロナ禍の打撃もあいまって、経済的に苦しい思いを抱える方は多いです。
給与に変化がみられるとき、どうしても「うらやましい」と話題になるのが公務員。
給与だけでなく退職金や年金が話題に上ることもあります。
確かに一昔前には独自の3階建ての年金があったため、公務員の年金は一般的に恵まれていました。しかし今は廃止され、民間の会社員と同じく厚生年金に加入しています。
そんな公務員の年金について、くわしく見ていきましょう。
【注目記事】【厚生年金と国民年金】税金や保険料が天引きされると手取りはいくらになるのか
「公務員の年金」は厚生年金に統合されていた
日本の年金制度は1階部分が「国民年金(基礎年金)」、2階部分が「厚生年金」からなっていますが、かつての公務員の年金制度は3階建て構造をしていました。
公務員の年金制度(2015年以前)
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出所:国家公務員共済組合連合会「共済年金は厚生年金に統一されます」
- 1階部分(老齢基礎年金):日本に住む20~60歳未満のすべての人が加入する年金
- 2階部分(退職共済年金):会社員の場合は厚生年金
- 3階部分(職域部分):会社員の場合は企業年金
公務員の年金制度(2015年以降)
しかし、2015年(平成27年)10月に、共済年金は厚生年金に統合されています。これにより、今は公務員も会社員と同じ「厚生年金」に加入しているのです。
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出所:国家公務員共済組合連合会「共済年金は厚生年金に統一されます」
この改正で2階部分が会社員と同じ厚生年金になったほか、3階の職域部分は廃止になりました。その代わり、「年金払い退職給付」が新設されたのです。
また保険料の料率にも変化があり、2018年には厚生年金の保険料率18.3%に統一されています。
この改正により、現代においては会社員も公務員も同じ厚生年金となりました。
では、2015年(平成27年)10月以前に共済年金に加入していた公務員は、それまで納めた保険料はどうなってしまうのでしょうか。
実は納めた保険料に応じた年金は受け取れるため、まだまだ優遇された年金を受給している方はいるのも事実です。
3階部分の「年金払い退職給付」が新設
新たに創設された「年金払い退職給付」が気になる方もいるでしょう。
「年金払い退職給付」は公務員独自の制度であり、民間の企業年金に相当する労使折半の年金です。
民間では企業年金を有する企業が過半数を占めており、それを校了する対応として創設された背景があります。
そんな年金払い退職給付ですが、実際には退職手当と2本建てで老後に支給されます。
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出所:国家公務員共済組合連合会「共済年金は厚生年金に統一されます」
また年金払い退職給付は、半分を「有期年金」、半分を「終身年金」として受け取れます。
- 有期年金:10年、もしくは20年。途中で死亡した場合、残りは遺族が受給
- 終身年金:一生涯受給。死亡した時点で支給が終了
もしくは、一時金として一括受給することも選択可能です。
気になる金額ですが、毎月の標準報酬月額および標準期末手当等の額に付与率(労使あわせて1.5%を上限)を乗じた「付与額」を毎月積み立て、利息を加えた「給付算定基礎額」を基に算定されます。
公的年金のような賦課方式ではなく積立方式のため、将来の受給額を正確に試算することはできません。
参考までに、国家公務員共済組合連合会「退職等年金給付制度の平成30年財政再計算および財政検証(平成29年度末)の結果について」よりモデルケースをご紹介します。
平成27年モデル年金額の計算の前提
・ 平均標準報酬月額 : 40.5万円
※ 国共済(平成30年3月末)と地共済の全組合員の標準報酬月額の平均値
・ 組合員期間 : 40年加入(20歳~60歳)
・ 支給開始年齢 : 65歳
・ 有期年金の受給期間 : 20年を選択
・ 付与率 : 1.50%
・ 基準利率 : 0.20%
もし20年受給を選択した場合、年金月額は1万6007円(終身退職年金:7466円、有期退職年金:8541円)です。こちらが厚生年金等に上乗せされるということですね。
また公務にもとづく負傷、または病気により、障害の状態になった場合や死亡した場合には、「公務上障害・遺族年金」が支給されます。
これらの制度により、公務員の年金は実質3階建てを保てているとも言えるでしょう。
厚生年金はみんな月平均でいくら受給してる?
今度は視点を変えて、厚生年金の受給額を確認しましょう。現代のシニアはいくら厚生年金を受給しているのでしょうか。
厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに見ていきます。
厚生年金平均月額
〈全体〉平均年金月額:14万4366円
〈男性〉平均年金月額:16万4742円
〈女性〉平均年金月額:10万3808円
※国民年金の金額を含む
厚生年金月額階級別の老齢年金受給者
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出所:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
- 1万円未満:10万511人
- 1万円以上~2万円未満:1万8955人
- 2万円以上~3万円未満:6万6662人
- 3万円以上~4万円未満:11万9711人
- 4万円以上~5万円未満:12万5655人
- 5万円以上~6万円未満:17万627人
- 6万円以上~7万円未満:40万1175人
- 7万円以上~8万円未満:69万4015人
- 8万円以上~9万円未満:93万4792人
- 9万円以上~10万円未満:112万5260人
- 10万円以上~11万円未満:111万9158人
- 11万円以上~12万円未満:101万8423人
- 12万円以上~13万円未満:92万6094人
- 13万円以上~14万円未満:89万7027人
- 14万円以上~15万円未満:91万3347人
- 15万円以上~16万円未満:94万5950人
- 16万円以上~17万円未満:99万4107人
- 17万円以上~18万円未満:102万4472人
- 18万円以上~19万円未満:99万4193人
- 19万円以上~20万円未満:91万6505人
- 20万円以上~21万円未満:78万1979人
- 21万円以上~22万円未満:60万7141人
- 22万円以上~23万円未満:42万5171人
- 23万円以上~24万円未満:28万9599人
- 24万円以上~25万円未満:19万4014人
- 25万円以上~26万円未満:12万3614人
- 26万円以上~27万円未満:7万6292人
- 27万円以上~28万円未満:4万5063人
- 28万円以上~29万円未満:2万2949人
- 29万円以上~30万円未満:1万951人
- 30万円以上~:1万6721人
今のシニア世代の受給額は平均で月14万円台。男性は16万円台、女性は10万円台です。
公務員の年金制度は2015年に厚生年金へ統合されていますが、旧制度に加入していた分は支給されているため、いまだ公務員との格差を感じる方は少なくないでしょう。
公務員も会社員も考えたい老後のお金
厚生年金へ統合されたものの、それまで払っていた分や新たな年金払い退職給付もあり、まだまだ公務員がうらやましいと感じる方は多いでしょう。
とはいえ、政府は官民格差の是正を目指しています。実際に公務員の年金制度が厚生年金に統合されたように、今後は格差がますます埋まっていくでしょう。
「公務員と会社員の違い」ではなく、個人間格差が重要になると予想できます。
また、令和4年度の年金受給額が0.4%減額されたように、少子高齢化や賃金低下が続く日本では、年金水準がどんどん減ってしまう可能性も十分考えられます。
誰にとっても「老後のお金」は課題が山積です。働き方で安心するのではなく、しっかりライフプランを練ってみましょう。
数十年スパンの長期計画を立てることで、必ず課題が見つかるものです。まずはしっかり向き合ってみましょう。
参考資料
- 国家公務員共済組合連合会「共済年金は厚生年金に統一されます」
- 厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和3年12月)
- 国家公務員共済組合連合会「退職等年金給付制度の平成30年財政再計算および財政検証(平成29年度末)の結果について」
太田 彩子
