家計調査は統計ですから、年金生活者の「平均的な」収支から、受け取る年金だけでは足りないことはわかります。ただ、上記のように4年間で老後30年の不足額が2,000万円から55万円と大きくぶれる結果をもとに自分の老後に必要なお金を考えるのは無理があるといわざるをえません。

それより、年金だけでは足りないことを前提に、自分の受け取る見込みの年金額※から自分自身が準備すべき老後資金を試算する方が、面倒なようで実は近道だといえます。

※日本年金機構の「ねんきん定期便」に記載、「ねんきんネット」でも確認できる。

老後は生活費以外の「特別支出」が負担に

実は、金融庁の報告書の「約2,000万円の取崩しが必要になる」には続きがあり、「支出については、特別な支出(例えば老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいないことに留意が必要である」と記載があります。

家計調査から試算された不足額の算出に使われている支出は毎月の生活費。ところが、60歳以降の約30年を老後としたとき、定年退職後の支出は、生活費以外にも住宅の修繕費や車の乗り換え、医療費や介護費用などがあります。

たとえば、住宅ローンを完済時点で住宅はすでに30年以上経過しているのが一般的です。終の棲家として暮らすには、水回りなどのリフォームは考えておくべき費用だといえるでしょう。

また、公共交通が発達した都会に住んでいるのでなければ、車の乗り換えも1、2回は必要になるでしょう。車を所有していれば、セットで車検や自動車保険の費用も発生します。