いつの時代も老後に対する不安は尽きないものです。
近年は働き方の多様化により、定年が延長されたり、それに伴う年金制度の改定など、老後にまつわる話題は事欠きません。
定年以降の人は、現在進行中で年金生活を送っているだけに、このような話題を真剣に受けとめている人も多いかもしれませんね。
私はこれまで資産形成のアドバイザーとして、多くのお客様のファイナンシャル・プランニングを担当させて頂きました。
そこで本日は70代の貯金事情に注目して、老後の格差が生まれる理由を見ていきたいと思います。
年金生活を送る70代、貯金額はいくらか
それでは、年金生活中の70代の貯金額を見ていきましょう。
金融広報中央委員会が実地した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]令和元年調査結果」を下記にまとめています。
70歳以上の金融資産保有額(金融資産保有世帯)
- 平均値:1978万円
- 中央値:1100万円
平均値は極端に金融資産の大きい人も含まれていますので、実際には中央値の金額を目安にされるといいかと思います。
ちなみに、一昨年話題にのぼった「老後2000万円問題」、覚えておられますでしょうか。
「年金だけでは老後に約2000万円足りない」と報告がなされ、ずいぶん話題になりました。
この2000万円に焦点をあわせてデータを調べると、2000万円以上保有している人の割合は38.4%でした。
ただし、これは金融資産を保有している世帯のみのデータです。
次で、金融資産非保有世帯を含めたデータを見てみましょう。
70代の貯金ゼロ世帯はどのくらいいるか
70代の金融資産を保有していない世帯、つまり「貯金ゼロ」世帯を含めると、データはどうなるのでしょうか。
実際に見てみます。
70歳以上の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
- 平均値:1314万円
- 中央値:460万円
- 金融資産非保有率:31.1%
ずいぶん値が下がった印象です。
中央値は1100万円から一気に460万円まで下がりました。
この値ですと、十分に貯金があるとは言い切れない額です。
そして「貯金ゼロ」世帯である「金融資産を保有していない世帯」の割合ですが、なんと31.1%にものぼっています。
70歳以上の約3~4人に1人が金融資産を保有していないことになりますね。
ちなみにここでいう金融資産は預貯金以外の生命保険や株式、投資信託なども含みます。
70代を超えて、貯金が無い状況は大変心配です。
加齢とともにや体力が衰えたり、体調を崩す人も多くなるでしょう。このような時に頼りになる貯金がないと、緊急事態に対処できない可能性もあります。
できれば年金生活に入る前に、老後に向けての準備をしておいた方がよさそうです。
老後格差はなぜ生まれるか
金融資産を保有している世帯の中央値は1000万円、金融資産を保有していない世帯を含めた中央値は460万円となっていました。
このことからも、貯蓄がある人とない人の間に貯蓄の格差が広がっていることがわかります。
なぜこのような老後格差が生まれるのでしょうか。
内閣府が、日本と諸外国の高齢者の生活意識を把握するために実地した「平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」を参考に検証したいと思います。
「老後の生活費に対する備え」の項目で、「50歳代までに、老後の経済生活に備えて特に何かしていたか」という質問があります。
この問いに対する結果を見てみましょう。結果は下記のようになっています。
- 預貯金:46.6%
- 個人年金への加入:19.6%
- 債権・株式の保有、投資信託:7.1%
- 特に何もしていない:42.7%
注目して頂きたいのは、「特に何もしていない」と答えた方の割合です。
実に約4割を越える人が、何の準備もされてないという結果になっています。
これは「老後に対する不安はあったもののどうしていいか分からず、老後対策ができなかった」人がいることを示しています。
このことが上記の老後格差に繋がっていった可能性があると推測します。
おわりにかえて
老後の貯金格差をなくすためには、老後を迎える前の準備がとても大事です。
その準備期間が長ければ長いほど、余裕を持って着実に準備を進める事ができます。
今の日本は人生100年時代と言われています。長く生きるということは、それだけの生活資金が必要ということです。
健康寿命が伸びている反面、銀行や郵便局に預けるだけでお金を増やすことは難しい時代です。
老後の資産を効率よく形成していくために、国の制度であるつみたてニーサやイデコなどへの加入を検討してみてもいいかもしれません。
税制優遇制度を活用しながら、老後の資産形成を始める環境は整ってきています。
これからの時代、自分がどれだけ長生きするかということは誰にもわかりません。
分からないことだからこそ余裕を持って準備をすることが必要ではないでしょうか。
参考資料
- 金融広報中央委員「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査(令和元年)]」
- 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理
- 内閣府[平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果]
- 山下耕太郎「定年後70代貯蓄、真ん中の中央値の金額はいくらか」(LIMO)
- 多田秋「定年後70歳、貯蓄額はどのくらい?老後の貯蓄格差で悩まないために」(LIMO)
- マネイロ「資産運用はじめてガイド」
- 土屋史恵「つみたてNISAとは?メリットや仕組みを分かりやすく解説」(マネイロ「資産運用はじめてガイド」)
- 谷口裕梨「iDeCoとNISA、比較でわかる活用術(2021年版)」(マネイロ「資産運用はじめてガイド」
- 谷口裕梨「NISAとつみたてNISA、私はどっち?後悔しない選び方」(マネイロ「資産運用はじめてガイド」)
鶴田 綾
