令和元年6月、金融庁発表の「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」内で示された『老後2000万円問題』。これは、65歳以降の30年で貯蓄が2,000万円必要になるという1つの指標で、その内容からさまざまな不安や憶測を呼び起こしました。還暦を迎える世代の多くが、老後資金に対して多くの心配を抱えているようです。
しかし、実際定年を迎えるまでに2,000万円貯蓄をすることは可能なのでしょうか。還暦後の60代がどのくらい貯蓄をしているのかみていきましょう。
60代は老後資金に大きな不安を抱えている
バブル崩壊後の景気悪化期は「失われた20年」とも呼ばれ、収入も伸び悩みました。さらに少子高齢化などにより各種税金・保険料の負担も増え、その傾向は今後も強まると見込まれています。世代を問わず収入は全体的に低下傾向にあり、思うように貯蓄ができない世帯も少なくないでしょう。
また近年は、雇用の変化や退職金制度の有無、晩婚化などさまざまなライフスタイルの移り変わりで、格差も広がりやすい傾向にあるといわれています。定年退職を迎えた60代世帯も例外ではなく、その貯蓄傾向は2極化しているのが現状のようです。
松井証券株式会社が2020年10月22日に発表した「老後資金に関する調査」は、子と親のいる全国の20~60代男女800名を対象に、世代別の老後資金に関する実態を調べています。
この調査によると、年齢があがるにつれて『貯蓄額の理想と現実』のギャップが広がっていくことが分かります。なんと60代では、理想の貯蓄額と現実では-1,800万円もの差があるのです。また、『自分のため・自分たち夫婦のために貯蓄する理由』として、最も多い答えは「老後のため」でした。しかし60代の91.4%が「貯蓄だけでは老後資金が足りない」と回答しており、老後不安のトップも「老後資金」(79.5%)と、お金に関わる不安がとくに大きいことがみてとれます。