家族の介護を担う若者が増えています。

その数は、総務省の「就業構造基本調査(2017年)」で公表されているだけでも、15~29歳では約21万人以上、30代と40代では120万人以上となっています。そして、少子高齢化が進むいま、今後もさらに増加することが予想されます。

介護を担う若者に関わってくださる、医療・介護従事者の皆さんのみならず、「年老いた家族の介護なんかより、自分自身の人生を大切にすべきだ」と考えるみなさんに、家族の介護を担う若い孫世代が直面している現実を知っていただきたいと願っています。

※本稿は、奥村シンゴ著「おばあちゃんは、ぼくが介護します。」(法研)の一部内容を再編集し、著者による解説を加えたものです。

背景にある「複雑な家族関係」

若くして「孫介護」の当事者となった若者たちの多くは、複雑な家庭環境を抱えています。

筆者が知る例では、認知症のおばあちゃんとの同居介護を3年間余儀なくされた高校生も。お母さんが病気がちで、いつの間にか自分がおばあちゃんの面倒をみるようになった、ということです。

筆者自身は母子家庭の長男として育ちました。母親が若い頃からガンや拒食症など病気がちだったため、祖母が家を購入し、私たちきょうだいの「孫育て」を一人で引き受けてくれました。

その祖母に、ある出来事がきっかけで突然認知症の症状が現われました。ほぼ同時に母親が脳梗塞を発症。筆者は突然、祖母と母の「ダブル介護」の担い手となったのです。それは、今から8年前のことでした。

「3人きょうだいで協力すれば乗り切れるはず!」

軽い気持ちでスタートした介護生活。しかし、そう簡単にはいきませんでした。

私、弟と弟の嫁、妹と妹の旦那、母親が集まり、一度祖母の在宅介護について話し合いをしたことがあります。

私は「仕事したい」「結婚したい」「子どもが欲しい」など30代男性なら多くの人が持つ夢や希望がありますので、「みんなで協力して在宅介護してくれへんか」と相談をもちかけました。ところが…

 「おばあちゃんは、ぼくが介護します。」奥村シンゴ著(法研)より一部引用