「家で看たい」と思うのは、すごく自然な気持ち。

20代~30代位の男女といえば、就職、結婚、育児といった、人生のステップをふみながら一人前になっていくというビジョンを思い描く人がほとんどではないでしょうか。

同年代の仲間の多くは、社会人としての基盤を築いている。そんな時期を親族の介護にささげている「若者ケアラー」たちの声は、社会には極めて届きづらいというのが現状です。

しかし、こうした若者たちの多くは、介護が必要となった家族に寄り添う、それも、住み慣れた我が家で、一緒に過ごす時間を大切にしたい、という、強い気持ちによって支えられています。

ベタな表現でいうと、子ども時代の自分の心に寄り添ってくれた家族への恩返し。つまりそれは、損得勘定抜きにした、無償の愛情と呼んでもよいでしょう。

30代前半の筆者が、祖母を介護することを決心した際、周りは異口同音に、
「仕事も辞めなあかんしいつまで続くかわからんやん」と反対しました。

そのとき筆者の脳裏をかすめたのは、母親にかわり、「孫育て」に奮闘してくれた頃の、強くやさしい祖母の姿、そして、「シンゴくん」と筆者を呼ぶ、その声でした。