過疎化が進む地方都市では単純な年齢制限は難しいが

いずれにせよ、ここ数年急増してきた高齢者による運転事故は、今後も増加していく可能性は高いと考えられます。

なぜならば、65歳~74歳の運転免許保有者は全国に1,300万人以上もいるため、免許返納や自然減(死亡など)を勘案しても、少なくとも毎年100万人の新たな高齢者ドライバーが誕生するからです。もちろん、全員が死傷事故を起こすわけではありませんが、“予備軍”が確実に増えることは事実です。

そこで議論されているのが、運転免許の上限年齢の設定です。たとえば、75歳以降は運転免許更新を認めないという類です。

しかしながら、このような単純な年齢制限を実施すると、地方都市で生活する人々には死活問題です。地方では、次のコンビニ店舗まで10km要するのはごく普通であり、クルマの移動は必要不可欠です。100~200m於きにコンビニやスーパーが並ぶ都心とは全く異なります。

だからと言って、このまま毎年同じような悲惨な事故が起きるのを見過ごすこともできません。悲惨な事故を1件でも少なくするために、政府や地方自治体のみならず、自動車メーカーを始めとする民間企業も含めて、真剣に対応策を考えないといけません。

ただ、どのような施策になっても、各種法律の改正が必要になるため相応の時間を要するでしょう。もう一刻の猶予も許されないというのは、決して言い過ぎではありません。

葛西 裕一