これは不思議なことでした。前任者も質的には似たようなことをしていたので、もしもゼロ金利下の金融緩和に株価押し上げ効果があるのならば、黒田総裁の就任前から少しは株価が上がっていたはずなのですが、そうではなかったからです。
黒田総裁は、前任者と同じようなことを規模を拡大して行ない、自信満々に記者会見をしたことで投資家たちの考え方を変えたのです。
実は、さらに不思議なことがありました。実際には世の中に出回る資金の量は増えなかったのに株価が上がったのです。投資家たちは、「資金の量が増えるから株価が上がるだろう」と考えていたのですが、そうではなかったのです。
投資家たちが信じたのは間違った情報だったのですが、Cに投票した審査員が賞品にありついたのと同じで、間違った情報でも皆が信じれば株価を押し上げるのです。
病気の患者に「薬です」と言って小麦粉を渡すと患者の病気が治ってしまうことがあり、偽薬効果と呼ばれているようです。その意味では黒田緩和による株高も偽薬効果でした。株価を押し上げるはずがない政策で株価が上がったのですから。