借り手は、銀行から材料仕入れ資金を借りて製品を作り、販売代金で銀行に返済しますが、同時に次の材料の仕入れ代金も借りるので、結果として借入残高はずっと一定だ、という場合が多いのです。

そんな時に、「既存の融資は期限に回収しますが、新しい融資は実行しません」と銀行に言われたら、材料が仕入れられなくて倒産してしまうかもしれません。

そうなれば、中小企業は銀行を恨むはずです。それは当然のことです。しかし、銀行も意地悪で貸し渋りをしているわけではありません。融資をして金利を受け取るのが銀行の本業ですから、意地悪で断ることなど考えられないのです。

銀行には自己資本比率規制あり

世界中の主な銀行には、BIS規制という条約で自己資本比率規制という規制が課されています。それ以外の銀行にも、国内法で似たような規制が課されている場合が多いようです。

複雑な規制ですが、簡略化すれば「銀行は自己資本の12.5倍までしか融資してはならない」というものです。融資残高の12.5分の1(=8%)までは回収不能になっても銀行が債務超過に陥らないように、という規制なわけです。

銀行の不良債権が増加して決算が赤字になると、銀行の自己資本が減少しますから、融資残高を「減った自己資本の12.5倍」まで減らす必要が出てきます。したがって銀行は、不本意ながら貸し渋りをせざるを得ないのです。