公的資金の注入は、政治的に困難

銀行が貸し渋りをすると中小企業の倒産が増えて景気が悪化し、銀行の赤字が膨らんでさらに自己資本が減る、といった悪循環に陥りかねません。金融危機を防ぐための自己資本比率規制が、金融危機の初期においてはむしろ事態を悪化させてしまう、というわけですね。

そこで、悪循環を断ち切るために、銀行が増資をする必要が出てくるわけですが、悪循環の最中に引き受けてくれる投資家は、なかなか見つからないでしょう。

そうなると、銀行に公的資金を注入する必要が出てきます。公的資金の注入というのは、銀行に増資をさせて政府がそれを引き受けることです。それにより、銀行の自己資本が元に戻るので、銀行が貸し渋りをする必要がなくなる、というわけですね。

ところが、これに対しては世論の反発が強く、容易ではありません。日本のバブル崩壊後の金融危機の時も、米国のリーマンショック後の金融危機の時も、公的資金が注入されたわけですが、いずれも世論の説得に大変苦労したわけです。

倒産した中小企業の経営者が銀行を恨むのは当然のことです。彼らが「銀行を助けるために国民の血税を使うことは絶対に許さない」と言えば、世論はそれを支持するでしょう。それも自然なことです。