読者はすでに、銀行への公的年金の注入によって中小企業が貸し渋りを受けなくなる、ということを知っていますが、普通の中小企業経営者や庶民はそんなことは知りませんから、反対するのは自然なことなのです。

昔読んだ童話に、「手と口が喧嘩した。口ばかり美味しいものを食べてズルいといって、手が食べ物を運ばなくなったのだ」というものがあったと記憶しています。受益者が、自分が受益者であることに気付いていない悲劇というわけですね。悲しいことです。

さすがに日本政府も前回の件で学習したのでしょう。今回は早めに公的資金の注入を法律で定めるようです(金融機能強化法の改正)。銀行が実際に貸し渋りをして、銀行を恨む中小企業が増えてからだと難しいので、銀行が貸し渋りを始める前に法律を作ってしまおう、というわけですね。

そこで、実際に貸し渋りが発生する確率は高くないと思われますが、それでもリスクシナリオとして頭の片隅には入れておきたいですね。メインシナリオではないので、過度な懸念は不要ですが。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義