B子さんは、姉であるサトコさんの遺産を相続しましたが、B子・C子とは絶縁状態に。体力的にもしんどかった介護生活が報われたこと、娘にまとまった財産をのこしてやれるようになったことについては、正直嬉しい気持ちがあると語ってくれました。しかし、その引き換えに、三姉妹をいっぺんに失ってしまった、とも。2人の姉妹とはその後音信不通となっているとのこと。

さいごに

ヒロシさん、サトコさんのように、介護の貢献度を相続に反映させたいと考える高齢者は多いようです。サトコさんのように、良かれと思って作った遺言書がかえって“争族”の元になってしまったケース、ヒロシさんのように遺言がなくともスムーズに相続が進むケース、など、家庭よりさまざまです。

2019年7月、「特別の寄与」の制度(※3)が、2020年4月には「配偶者居住権」(※4)が新設され、そして前述の通り7月10日からは自筆の遺言が法務局で保管可能となるなど、相続にまつわる新しい制度が段階的にスタートしています。「自分亡き後、何を、誰に、どう託したいか」。その意思表示としての「遺言」について、一度考えてみませんか。

(※3)「特別の寄与」の制度:介護に貢献した“長男の妻”などが遺産の一部を受け取ることができる制度
(※4)「配偶者居住権」:夫(/妻)の死後も、その自宅に配偶者が住み続けることを認める制度

【参考URL】
(※1)「家事審判・調停事件の事件別新受件数―全家庭裁判所」司法統計 家事平成30年度 第2表」裁判所
民法第967条」e-Gov法令検索
(※2)「平成28年の遺言公正証書作成件数について」令和元年(平成31年)の遺言公正証書作成件数について」日本公証人連合会
相続に関するルールが大きく変わります」法務省

佐橋 ちひろ