新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で学校の休校が長引き、保育園から大学まで様々な形で教育への影響が出ているのはご承知の通りです。そんな中、にわかに浮上したのが9月入学の問題です。
この9月入学問題については、5月27日の報道で「政府・与党は2021年度からの9月入学を見送る方針を固めた」と伝えられています。本稿では改めて、9月入学推進派が考えるメリット、反対派の意見、実施にあたっての課題などをまとめたうえで、9月入学の議論を継続していくべきであると考える筆者の見解を述べたいと思います。
高校生が9月入学を呼びかけ。全国知事会も動く
大阪の公立高校3年生が4月半ば過ぎに、ネット署名サイト(Change.org)で「日本全ての学校の入学時期を4月から9月へ」という呼びかけを始めたことが報道されています。そこに掲げられた彼らの意図は次のようなものでした。
- 全国一律で休校にすることで、9月から平等な教育を受けられる可能性が高い
- 入試などもそれに準ずることで混乱を抑えることができる
- 海外の学校と足並みをそろえることによる留学の推進
- かけがえのない青春を取り返すことができる
長いこと大学教育の現場にいた者として、筆者は以前から9月入学は我が国の教育改革のきっかけになると思ってきましたので、高校生の勇気ある行動に拍手を送りたいと強く感じました。
この行動が契機となり、真っ先に動いたのは全国知事会です。小池東京都知事は、「中世の時代、ペストの後に起きたのがルネサンスであり、9月入学制度の導入は社会改革をもたらす」と話し、吉村大阪府知事も「実現させるならこのタイミング、今できなかったらこの後ずっとできない、今やるしかない」と強調しました。
全国知事会では賛否両論があったようですが、どの知事からも我が国の大きな課題であるという点において否定的な意見はなく、9月入学の検討を国に要望することで意見が一致したのは歓迎すべきことでした。