ちなみに、日本経済新聞社が都道府県知事に賛否を聞いたところ、約60%の知事が賛意を示したとのこと。また、安倍首相も萩生田文科相も、記者会見で「9月入学は有力な選択肢の一つだ」と語りました。

大学の9月入学の議論は以前からあったものの、小学校、中学校、高等学校を含めた9月入学に関して、マスメディア、国会、全国知事会などで、これほどまでに活発に取り上げられたことはありませんでした。

コロナによる休校が9月入学議論に火をつけた

5月25日、緊急事態宣言が全面解除となりました。それに伴い、文部科学省によれば、6月1日までには全国でほぼ100%の公立学校が何らかの形で再開されると言います。しかし、長引いた休校で生徒、保護者、現場の教師、教育委員会、自治体などが疲弊しているのは間違いないでしょう。

また、この休校ではオンライン授業への対応や入学試験対策をどうするのかなど、種々の問題がクローズアップされました。中でも公立と私立による休校対応の違い、地域による再開時期の違いなどで学力格差が生じることへの懸念が保護者の間で広がっています。

このような状況下、学ぶ機会の格差そして地域格差を埋めようと、複数の地方自治体の首長から9月入学を検討すべきとの意見が出されたのは、時宜を得ていたように思います。コロナ禍による学校休校がもたらした副産物と言えなくもないでしょう。

9月入学のメリットとデメリット

教育改革は、初等・中等教育(保育園、幼稚園、学童保育、小学校、中学校、高等学校)から、高等教育(専門学校、大学、大学院)を眺め、またその逆に高等教育から初等・中等教育を見つめ、それらの教育体制全般を改革する必要があります。

9月入学について言えば、2011年に東京大学が打ち上げた秋入学構想は、いわばトップダウン。先述の高校生のネット署名活動や全国知事会での動きは、ボトムアップとも言えます。