皆が危ないと思うと本当に危なくなる

金融危機を考える際に重要なことは、皆が危ないと思うと本当に危なくなる、ということです。トイレットペーパー不足は、原因がなかったのに皆が「不足する」と思っただけで起きたわけですが、金融危機も同様に原因が無くても起きることなので、恐ろしいのです。

皆が「あの銀行は破綻する」と思うと皆が預金を引き出すので、本当に金庫が空になって破綻してしまうかもしれません。「あの借り手が危ない」と銀行が考えると、一斉に返済要請が来るので、本当に倒産してしまうかもしれません。

「他人が買う前にトイレットペーパーを買おう」「他人が引き出す前に銀行預金を引き出そう」「他の銀行が返済要請をする前に返してもらおう」と人々が考え始めたら、その流れを止めることは容易ではありませんから。

リスクシナリオは多様

不況で倒産が増加すると銀行の損失が膨らみます。人々が不安に思うようになった時に「あの銀行は危ない」といった噂(またはデマ)が流れると、取り付け騒ぎが起きるかもしれません。長引くゼロ成長とゼロ金利で痛んでいる地域金融機関も多そうですから、要注意ですね。

取り付け騒ぎまでは行かなくても、銀行が自己資本比率規制の影響で貸し渋りをせざるを得なくなる、という可能性もあります。大胆に簡略化すると、銀行は自己資本の12.5倍までしか貸出ができないので、赤字が続いて自己資本が減ると、貸出を減らさなくてはいけなくなるからです。バブル崩壊後の金融危機の時に貸し渋りが横行したので、覚えている方も多いと思いますが。