先進国でも、たとえばイタリアの経済は深刻でしょうから、税収が落ち込んで景気対策費用が嵩んでイタリア政府が破綻する、といった可能性も皆無ではありません。ユーロ圏諸国が必死に助けようとするでしょうから、過度な懸念は不要でしょうが、リスクシナリオとしては留意しておきましょう。
新型コロナの影響で、生産が滞る物が増えたり流通が滞ったりすると、インフレになるかもしれません。深刻な不況とインフレが共存する「スタグフレーション」は、景気対策とインフレ対策という相反することを同時に行わなくてはならないので、大変です。
インフレ対策を優先して金融を引き締めた場合、国債価格が暴落して金融機関が大きな損を被り、それが金融危機をもたらす可能性も皆無ではないでしょう。
以上、色々と記して来ましたが、本シリーズは予測ではなくリスクシナリオですので、リスクの存在を頭の片隅に置いておこう、ということであって、過度な懸念は不要です。
政府が感染症の専門家の話だけを聞いて、不況の深刻化を放置していると、リスクシナリオが実現してしまうかもしれませんが、さすがに政府も景気のことが気になって自粛要請のレベルを下げましたから。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義