そのうち中小企業支援施策については、米国の中小企業融資(3,500億ドル、雇用を維持すれば返済不要)、ドイツの政府系金融機関からの借入額90%減免、スペインの中小企業向け融資11兆円、フランスの35兆円の融資枠追加、イタリアの特別融資・借入返済猶予などが挙げられます。
また自営業者・フリーターに対しては、特例としての失業保険適用(米国、スペイン)、事業規模に応じた100万円〜180万円給付(ドイツ)、17.5万円給付や賃料・公共料金の支払猶予(フランス)、7万円給付(イタリア)などがあります。
財源については、各国とも国債発行などに頼ることになります。すでにドイツでは、2005年のメルケル政権発足以来、「国債の新規起債ゼロ」という財政規律の継続を断念し、7年ぶりの新規国債発行に踏み切りました。ドイツの動きは象徴的です。このフェーズまでは、とにかく手遅れにならないよう国民経済を速やかに救済しなければならないからです。
次の「景気後退」のフェーズでも、引き続き、同様の施策や伝統的な景気浮揚策が求められるでしょう。
したがって、「景気後退」フェーズが終わるまでは、世界各国の政府はある程度、社会主義的なシステム(民間銀行に任せず政策金融機関から直接、中小企業に融資を行う、各種補助金を増やすなど)が拡充され、その結果、政府債務は増加することが予想され、国によっては財源不足が深刻化する心配があります。
特に途上国では財源不足の問題はかなり深刻ですが、国際機関や財政基盤が弱体化した主要先進国からの資金援助にも限界があるでしょう。そんな中、親中国であるアフリカ諸国でも中国に反旗を翻すコロナ訴訟が出始めています。
たとえば、ナイジェリアの『デイリーポスト(Daily Post)』(4月26日付)によれば、ナイジェリアの法律家グループは、新型コロナウイルス感染症の蔓延に関し、中国に対して賠償金2,000億ドル(約21兆円)を請求する訴訟を起こしました。
今後、そのような損害賠償がどれくらい認められるか状況を注視していく必要がありますが、少しは政府債務の膨張を抑制することにつながるかも知れません。