株主利益より従業員の雇用維持を! コロナ不況に学ぶROE重視経営の危険性

さらに問題なのは、会社が危険なビジネスに手をだしかねない、ということです。50%の確率で20儲かるか20損する、というビジネスがあったとします。

A社やB社は特に興味を示さないでしょうが、C社の株主は大いに興味を示すでしょう。50%の確率で20儲かり、50%の確率で10損する(残りの損は銀行が被る)わけですから。

そうなると、会社が高いROEを求めてC社に転換したことで、日本企業が従来より危険なビジネスに手を出すようになり、倒産リスクがダブルパンチで高まる、ということにもなりかねません。

銀行貸出の金利を引き上げるのが筋だが

企業がC社に転換したがり、しかも危険なビジネスに手を出すようになる、というのは株主の論理です。それによって倒産が増加して日本経済が損失を被るのは愉快なことではありません。じつは、それを防いでくれると期待されるのが銀行なのです。

理論的には、C社に貸すのはA社やB社に貸すよりも危険な行為ですから、銀行としてはC社向けの貸出はA社向けやB社向けよりも高い金利を要求するべきです。

見方を変えると、銀行にとってC社への融資は損な賭けです。C社が儲かれば自分はわずかな金利収入だけで儲けの大半は株主のもの、会社が大損すれば株主の損は限定的で残りは自分の損、ということになるからです。その分だけ、C社への融資には慎重になるべきで、貸す場合でも高い金利を要求するべきです。

そうすれば、企業もC社への転換を思いとどまるかもしれません。銀行には大いに期待しています。

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ。
現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と関係なく個人として行なっているため、現職は経済評論家と表記したものである。
(近著)
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(雑誌寄稿等)
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