株主利益より従業員の雇用維持を! コロナ不況に学ぶROE重視経営の危険性

ROE重視経営は危険なので、行き過ぎないように企業と銀行に慎重さが求められる、と筆者(塚崎公義)は考えています。

ROEを高める手段は高収益とレバレッジ

ROE(Return on Equity)の高い会社は良い会社だ、と言う人は大勢います。ROEというのは利益を株主資本(または自己資本、純資産)で割った値のことですから、「同じだけ資本を使っているなら利益が多い方が良い」ということですね。当然のことのように聞こえますが、実はそうでもないのです。

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会社は株主資本(株主から集めた資金等)と負債(銀行から借りた資金等)を使ってビジネスをして利益を稼いでいます。利益を総資本(株主資本と負債の合計。以下同様)で割った値をROA(Return on Assets)と呼びます。これは、高い方が良いですね。

では、ROEとROAの違いは何でしょう。それは、総資本に占める株主資本の比率が違うのです。

負債がなければ、ROAとROEは同じになりますが、総資本の半分が負債ならばROEはROAの2倍になります。分子は同じで分母が半分になるからです。同じ理屈で、総資本の90%が負債ならばROEはROAの10倍に、99%が負債ならば100倍になるのです。

ROAを高めるのは大変なことです。素晴らしい製品を開発したり生産工程を合理化したり、まさに会社の実力が問われますので、社長が全力で取り組む必要があります。

しかし、ROEを高めるだけであれば、財務部長1人で簡単にできます。銀行から借金をして自社株買いをして、A社をB社やC社にすれば良いのですから。

A社:ROAは1% 総資本は100 負債は0 ROEは1%
B社:ROAは1% 総資本は100 負債は50 ROEは2%
C社:ROAは1% 総資本は100 負債は90 ROEは10%

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ。
現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と関係なく個人として行なっているため、現職は経済評論家と表記したものである。
(近著)
なんだ、そうなのか! 経済入門
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経済暴論: 誰も言わなかった「社会とマネー」の奇怪な正体
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(雑誌寄稿等)
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