ROE重視経営は危険なので、行き過ぎないように企業と銀行に慎重さが求められる、と筆者(塚崎公義)は考えています。
ROEを高める手段は高収益とレバレッジ
ROE(Return on Equity)の高い会社は良い会社だ、と言う人は大勢います。ROEというのは利益を株主資本(または自己資本、純資産)で割った値のことですから、「同じだけ資本を使っているなら利益が多い方が良い」ということですね。当然のことのように聞こえますが、実はそうでもないのです。
会社は株主資本(株主から集めた資金等)と負債(銀行から借りた資金等)を使ってビジネスをして利益を稼いでいます。利益を総資本(株主資本と負債の合計。以下同様)で割った値をROA(Return on Assets)と呼びます。これは、高い方が良いですね。
では、ROEとROAの違いは何でしょう。それは、総資本に占める株主資本の比率が違うのです。
負債がなければ、ROAとROEは同じになりますが、総資本の半分が負債ならばROEはROAの2倍になります。分子は同じで分母が半分になるからです。同じ理屈で、総資本の90%が負債ならばROEはROAの10倍に、99%が負債ならば100倍になるのです。
ROAを高めるのは大変なことです。素晴らしい製品を開発したり生産工程を合理化したり、まさに会社の実力が問われますので、社長が全力で取り組む必要があります。
しかし、ROEを高めるだけであれば、財務部長1人で簡単にできます。銀行から借金をして自社株買いをして、A社をB社やC社にすれば良いのですから。
A社:ROAは1% 総資本は100 負債は0 ROEは1%
B社:ROAは1% 総資本は100 負債は50 ROEは2%
C社:ROAは1% 総資本は100 負債は90 ROEは10%