株主が経営者に高ROEを求めるのは当然

株主が経営者に高いROEを求めるのは、当然のことです。「私が投資した資金を効率よく用いて高いリターンを戻してくれよ」ということですから。したがって、社長がROAの向上に全力で取り組む必要があるのは当然です。

しかし、財務部長がROEを上げるためにC社を目指すことに関しては、問題があります。借金をして自社株買いをするということは、企業が倒産した場合のリスクを銀行に押し付けるということになるからです。

A社は、赤字になれば、それは全て株主の損になります。B社も、赤字が50以下ならば、それは全て株主の損になります。しかし、C社は、赤字額が10を越えると、超えた部分は銀行の損になるのです。株主有限責任の原則により、株主は出資額以上の損失を負担する必要はないからです。

これは、株主にとって非常に都合の良い一方で、日本経済にとっては都合の悪い状況です。

倒産は日本経済にとって大きな損失

A社よりB社、B社よりC社の方がROEは高いので、経営者がROE向上を目指すと日本企業がC社的になっていくわけですが、当然ながら、倒産リスクはC社の方が高いわけです。

企業が倒産すると、経営者や従業員が失業するだけではありません。まだ使える設備機械がスクラップ用に叩き売られたり、会社が持っているノウハウや信用や顧客リスト等々が雲散霧消してしまうわけです。

これは、日本経済にとって大きな損失です。「株主が利益を追求すると倒産確率が高まって日本経済が不利益を被る」というわけですね。