株主利益より従業員の雇用維持を! コロナ不況に学ぶROE重視経営の危険性

株主が経営者に高ROEを求めるのは当然

株主が経営者に高いROEを求めるのは、当然のことです。「私が投資した資金を効率よく用いて高いリターンを戻してくれよ」ということですから。したがって、社長がROAの向上に全力で取り組む必要があるのは当然です。

しかし、財務部長がROEを上げるためにC社を目指すことに関しては、問題があります。借金をして自社株買いをするということは、企業が倒産した場合のリスクを銀行に押し付けるということになるからです。

A社は、赤字になれば、それは全て株主の損になります。B社も、赤字が50以下ならば、それは全て株主の損になります。しかし、C社は、赤字額が10を越えると、超えた部分は銀行の損になるのです。株主有限責任の原則により、株主は出資額以上の損失を負担する必要はないからです。

これは、株主にとって非常に都合の良い一方で、日本経済にとっては都合の悪い状況です。

倒産は日本経済にとって大きな損失

A社よりB社、B社よりC社の方がROEは高いので、経営者がROE向上を目指すと日本企業がC社的になっていくわけですが、当然ながら、倒産リスクはC社の方が高いわけです。

企業が倒産すると、経営者や従業員が失業するだけではありません。まだ使える設備機械がスクラップ用に叩き売られたり、会社が持っているノウハウや信用や顧客リスト等々が雲散霧消してしまうわけです。

これは、日本経済にとって大きな損失です。「株主が利益を追求すると倒産確率が高まって日本経済が不利益を被る」というわけですね。

参考記事

ニュースレター

メールアドレスをご登録いただくと、毎朝LIMOの更新情報をお届けいたします。
塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ。
現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と関係なく個人として行なっているため、現職は経済評論家と表記したものである。
(近著)
なんだ、そうなのか! 経済入門
老後破産しないためのお金の教科書
経済暴論: 誰も言わなかった「社会とマネー」の奇怪な正体
一番わかりやすい日本経済入門
日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由
(雑誌寄稿等)
Facebook、NewsPicks、アメブロ等にて適宜ご紹介