2019年1月、自筆証書遺言の一部にパソコンの使用が可能となり、作成へのハードルが低くなりました。

デジタル大辞林(小学館)では、
【遺言】「人が、死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などにつき、民法上、一定の方式に従ってする単独の意思表示」と定義されています。

また、民法第967条では、
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない」と、3つの遺言方式が定められています。

それぞれ、「自筆証書遺言」「遺言公正証書」「秘密証書遺言」の呼称が定着しています。

いずれの場合も、定められた様式で作成され、必要条件を満たすことが重要となります。
では、各様式の特徴、メリット・デメリットなどをみていきましょう。

自筆証書遺言

様式

  • 遺言者が全てを自筆し、捺印する。(※2019年1月13日から、財産目録についてはパソコン使用が可

メリット

  • 作成にあたり特別な手続きが不要、他人に内容を知られずにすむ

デメリット

  • 死後発見された遺言書は家庭裁判所の「検認(遺言書を確認・調査する手続き)」が必要
  • 作成日の記載漏れ、自筆すべき箇所をパソコンで作成した、など、様式の条件を満たしていなかった場合は、遺言としての効力を失う
  • 紛失・改ざんや、最悪の場合死後発見されないリスクがある(※2020年7月10日からは、法務局で遺言書が保管可能に)

遺言公正証書

様式

  • 遺言者の指示によって公証人が筆記。 遺言者、公証人、および証人(2人以上)が内容を承認し、署名・捺印する。

メリット

  • プロである公証人が作成するため、遺言としての様式や内容面での不備は生じにくい
  • 公正役場の遺言書検索システムで遺言の存在を調べることができる

デメリット

  • 公証役場への申請が必要
  • 作成手数料(※相続財産の額によって決まる)が必要

※詳細は日本公証人連合会ホームページの「法律行為に関する証書作成の基本手数料」をご覧ください。

秘密証書遺言

様式

  • 遺言者が遺言書に署名・捺印して封印したものを、公証役場に持ち込む。 封紙に公証人および証人(2人以上)が署名・捺印する。

メリット

  • 遺言の内容を誰にも知られずに済む

デメリット

  • 内容面で不備があり、無効となる可能性が高い
  • 自身での保管が必要となり、紛失などのリスクがある

比べてみると・・・

煩雑な手続きや手数料などが不要という点などで、自筆証書遺言は最も手軽に作成できる様式といえます。

2020年7月10日から法務局で遺言書の管理が可能になると、作成を検討する人が増える可能性があるでしょう。

遺言公正証書は、内容面で信頼がおける点や、死後に遺言の存在を調べることができる、という点などをみても、最も確実性の高い様式といえます。

3つのうち最も利用が少ない秘密証書遺言については、「遺言書が存在する」という事実を証明するもの、程度の認識でよいかもれません。

ただ、秘密証書遺言としては無効となった場合でも、様式を満たしている場合には自筆証書遺言としての効力を持つことができる点(※)は知っておくとよいでしょう(※民法第971条 秘密証書遺言の方式の特則)。

どれくらいの人が遺言書を作っているの?

では、現在、いったいどれだけの人が「遺言」を書いているのでしょうか。遺言の種類ごとにみていきましょう。