今回の株価下落には、市場の高い期待が背景にある。2月中旬時点での市場コンセンサスは売上高2143億円、営業利益38億円、純利益12億円。売上高は会社予想が上回っているものの、利益予想は市場の期待する水準を下回っている。
純利益については、構造改革関連費用等の影響を精査中とのことで予想が据え置かれたため、市場コンセンサスとの比較は今のところはさほど意味はない。しかし、営業利益予想の修正値が市場コンセンサスに届いていない点が市場の大きな失望を誘い、売りが出たようだ。
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営業利益率"2%"牛肉・人件費高騰のインパクトは甚大
吉野家の置かれている厳しい事業環境をおさらいする。まず、人件費の慢性的な上昇だ。日本国内で人手不足が問題視される中、人を雇うコストは高まっている。吉野家の営業利益は2019年2月期に前年比98%減の1億円にまで大きく減少したが、この一要因も人件費高騰に伴う販管費率の上昇だった。
次に材料費の高騰。牛丼の材料となる米国産ショートプレート(バラ肉)の価格は、中国や香港を中心としたアジア圏での需要拡大に伴って上昇を続けている。1990年代には1キログラム当たり300~400円だったが、2010年以降は600~800円となっており、倍の水準にまで上昇。
それに加え、年によっては900円を超えるなど価格の変動幅も大きくなっており、吉野家にとって取り扱いの難しいハイリスクな材料になってきている。短期的に見れば、米国産ショートプレートの価格は2019年5月以降、下落が続いている。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03