奏功しているのは、市場開拓と集客を軸に据えた施策だ。市場開拓については「客層を変える」をキーワードに、改装による店舗内雰囲気の転換や、フライ定食やから揚げ定食といった新メニューの拡充、テイクアウトの導入などにより、若年層や女性客の獲得を進めている。

また、集客についても創業120周年施策として牛丼の新サイズ「超特盛」「小盛」の販売を開始したほか、各種割引キャンペーンも月ごとに実施。特に新サイズ「超特盛」「小盛」の効果は大きかったようで、月次の既存店売上高を見ると導入前の2月までは前年割れの低空飛行が続いていたものの、導入後の3月からは一転して5%前後の好調な伸びが続いている。

コスト上昇が続く中で、吉野家は店舗やサービス内容に工夫を凝らし、高付加価値化を図ることで対応している。実際に、牛丼事業での店舗当たり売上高は年々増加基調にある。1月に発表された業績予想の上方修正もこうした取り組みに由来する既存店売上高の伸びが大きく寄与してのものだ。

しかし、牛肉・人件費高騰という着実に進展する問題に対し、店舗のイメージチェンジや新メニューの導入、市場開拓といった成功確度の読みづらいハイリスクな策で対応している点には、危うさも感じる。今後は国内での人件費動向や米国産ショートプレート価格の推移を追いながら、「牛丼事業で既存店売上高のプラスをどれだけ維持していけるか」が注目を集めそうだ。

はなまるや海外への投資拡大で牛丼依存から脱却できるか

牛丼の材料である米国産ショートプレートは脂身が多く、現地である米国での需要は大きくなかった。そのために安価で仕入れることができ、それが「安い牛丼」へとつながり、吉野家の業績拡大にこれまで寄与してきた。